人生万事塞翁が馬。 でも、なんだかこんがらがってしまうことが多い日々。
           
ジェフリー・アーチャー『ゴッホは欺く』
2007年08月25日(土) 14:54
ゴッホは欺く 上巻 (1)ゴッホは欺く 上巻
ジェフリー・アーチャー 永井 淳

 ちびちび的プチ評
  いつもとは違うアーチャーと永井さん。
  長年のファンとしてはちと辛い。



ゴッホは欺く 下巻 (3)ゴッホは欺く 下巻
ジェフリー・アーチャー 永井 淳

新潮社 2007-01
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新興銀行の美術コンサルタントをしているアンナは、
ワンマン会長のフェンストンから
「クビ」を宣告されます。
荷物を手に、WTCノースタワー83階のエレベーターホールにいるとき、
ものすごい衝撃が!
日付は、2001年9月11日。
高層ビルに飛行機が突っ込むというテロ事件の、その時でした。

小説は、この前日にイギリスで起きた
伯爵家の女主人殺人事件からはじまり、
9月26日までという短期間の濃密なエンタテインメントです。

事件の後、83階を必死の思いで下りたアンナですが、
知人の誰にも出会わなかったため、
行方不明者リストに入れられました。
それを逆手にとって、
アンナはフェンストンに一矢報いようとします。
ニューヨーク脱出、カナダへ国境を越え、ロンドンへ。
そして生まれ育った街・ルーマニアのブカレストへ。
今回のお話で初めて、東京も舞台となりました。

美術コンサルタントという職業柄、
また、フェンストンが伯爵家から騙し取ろうとしているのが
ゴッホの自画像ということもあって、
美術のうんちくがいっぱいです。
ゴッホが晩年、自らの耳を切り落としたことは、
よく知られていることだと思います。
でも、現実に切り落としたのは左耳、
自画像に描かれたゴッホは右耳に包帯をしている。
この謎が、お話のキモになっています。

ただ、しかし、でも。
アーチャーらしく、
大富豪と苦労人とFBIと暗殺者が
世界中を駆け回る。
めまぐるしく舞台が変わり・・・という辺りはいいのですが。
いつもの冴えが感じられない気がしました。
特に、舞台が東京に移ってからは、ちょっと違和感・・・。

英語とルーマニア語くらいしか知らない外国人が、
東京でタクシーに乗って、
あんなに動き回れるものだろうか。

前のタクシーをつけていって、見失わなかったら倍額払う、
ただし目立たないように。

映画のワンシーンのようなドキドキする展開ですが、

「そんなややこしい話、ちゃんと通じるんかいな・・」

と突っ込みたくなってしまうのです。
日本の財界人にナカムラ氏のような
ジェントルマンがいるんかいね〜、
とも思います。
そんな細かいことは気にしなきゃいいじゃん、
と思われるかもしれませんが、
小ネタが伏線になっているのがアーチャーなので、
どんな部分も読み飛ばせない。
ですから。
今回は永井さんの翻訳にも、ちょっと引っかかりました。

意味がつながらない〜!

て箇所が、ままあったので。
それでも。
楽しく読めるエンタテインメント小説ではあります。

ラストでアンナの友人の「秘密」の鍵が明かされます。
それは、前半にちらりと名前が出てきただけの人。
「誰、それ?」
と思うこと請け合いですよ。



『善き人のためのソナタ』
2007年08月24日(金) 14:25
善き人のためのソナタ

涙! ちびちび的プチ評
  国家に破壊される芸術と個人。ラストシーンが秀逸!

製作年 : 2006年
製作国 : ドイツ
配給  : アルバトロス・フィルム
監督・脚本 : フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
音楽  : ガブリエル・ヤレド
出演  : ウルリッヒ・ミューエ、マルティナ・ゲデック、セバスチャン・コッホ

シアワセな日々  あらすじ:
1984年、東西冷戦下の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)局員のヴィースラーは、劇作家のドライマンと舞台女優である恋人のクリスタが反体制的であるという証拠をつかむよう命じられる。成功すれば出世が待っていた。しかし予期していなかったのは、彼らの世界に近づくことで監視する側である自分自身が変えられてしまうということだった。国家を信じ忠実に仕えてきたヴィースラーだったが、盗聴器を通して知る、自由、愛、音楽、文学に影響を受け、いつの間にか今まで知ることのなかった新しい人生に目覚めていく。ふたりの男女を通じて、あの壁の向こう側へと世界が開かれていくのだった…。(goo映画より)


ドイツ統一から10年以上を過ぎても、
ほとんど詳細が知られていなかった「シュタージ」。
隣近所、友人、親族みなが監視し合い、密告される・・・
そんなことがあるなんて!
権力者のジョークを口にしただけで、
地下の郵便室に追いやられてしまうのですもん。
これでは、本音を口にすることなんてできないし、
腹を割って語り合うなんて危険すぎる。

でも、よくもまあ、
こんなシステムを考え出したものだと思います。
お金はかからないし、反発はないし、
従順になるから、管理がラクチン。
世の権力者たちにとって夢のシステムなのでしょう。
な〜んて、ちびちびは感じてしまうのですが、
これは「平和ボケ」なのかも。
日本だって確実に、
「自由に物言える」空気がなくなってきてますものね。

この映画は、国家の暗部と、
その思想に疑問をもたずに歯車として機能していた男の姿を
淡々と描いています。
主人公ヴィースラー大尉を演じたウルリッヒ・ミューエさんは、
最初、何の感情もあらわしません。
その彼が、
「善き人のためのソナタ」の調べを聞いて、涙を流す。
太った娼婦に「そばにいてくれ」と懇願するシーンなどは、
だんだんと人間として目覚めていく姿をみているようで・・・。

彼は監視相手のドライマンとクリスタを
守ることを決めます。
国家の僕として働いてきた彼の一大決心。
引き裂かれるような思いがあったのでは?
と想像するのですが、
その辺りははっきり描かれていません。
ただ。
深夜の喫茶店や取調室でクリスタと対した時の
彼の表情を見ると、
「恋をした」というよりも、
ミューズを崇める男のような感じがします。
初めて体験する自分の心の動きに、
たぶんヴィースラー大尉自身が
一番とまどったのではないでしょうか・・・。
でも、彼が守ろうとしたものは、
とても悲劇的な形で失われてしまうのですが。

ベルリンの壁が崩壊し、
ドライマンはかつて自分が監視されていたことを知ります。
他の人は5センチくらいのファイル一冊なのに、
彼の報告ファイルは、ワゴンに山盛り。
「ごゆっくり」
なんて言われてしまう。
そこで初めて知る事実が、彼に新作を書かせます。
本にこめたメッセージは、彼らにしかわからない形で
郵便配達夫となったヴィースラー大尉に届けられます。
それをしっかりと受け止めた大尉の表情。
胸にドッシーンと響きました。

DVDはこちら!
善き人のためのソナタ スタンダード・エディション善き人のためのソナタ スタンダード・エディション
 監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
 音楽:ガブリエル・ヤレド
 出演:ウルリッヒ・ミューエ、マルティナ・ゲデック、
    セバスチャン・コッホ

アルバトロス 2007-08-03
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魚住昭『官僚とメディア』
2007年08月23日(木) 14:25
共同通信の元記者だった魚住昭さんの本です。

官僚とメディア官僚とメディア
魚住 昭

 ちびちび的プチ評
  情報産業としてのメディアの限界がよく分かります。

角川書店 2007-04
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魚住さんの文章は、
とてもやわらかく読みやすいです。
でも内容はとてもハードなもの。
ライブドア事件、耐震偽装事件、NHK番組改ざん事件などなど、
なんだかわけがわからない事件の内幕が
「そうだったのか!?
と、ちょっとショッキングに知らされる本です。
なんで、こういう話が、
大手新聞やテレビではできないのでしょう。
という疑問にも答えてくれています。

ちびちびはニュースは見るほうなのですが、
それでもライブドア事件の裁判なんて、
訳が分かりません。

いったい、何がいけなくて起訴されているわけ?

というのが、一番の疑問。
でも裁判ニュースを見ていても、
「社員に無視されてつらかった」なんて・・・
幼稚園児みたいな話を聞きたくないよ!
と思っていたのですが、
この本を読んで分かりました。
起訴事実があやふやだから、
検察も突っ込みようがないのでしょうね。
だからそんな瑣末な話が裁判で語られるんだ。
オイオイ・・・。

それぞれの事件について、
各所への地道な取材とインタビューが
時系列に並べて再検証されているので、
なんだかおかしな道に行きだしたゾというところが見えてきます。
そして、そこに絡んでくるのが、
官僚の皆さま。
特に、耐震偽装事件での対応は、
責任逃れと悪者を仕立てて批判をかわそうとする姿が
おぉ!よく分かりました!

ホントなら、大きなマスのメディアが伝えるべき
「真実」が伝えられない現実。
いつの間にか変わっている空気。
そこにあるのは、
組織を守ろうとする官僚と、
管理主義が増し、営利に追われる新聞社の姿。
ジャーナリズムのかけらもない。

学校などの教育現場にも取り入れられようとしている
「管理主義」ですが、
物言えぬ空気を作るばかりなのが目に見えているのに、
なぜにそんなに取り入れたいのか?
そこで生きている人が萎縮してしまえば、
組織も社会も縮小してしまうでしょうにね・・・。





荻原浩 『噂』
2007年08月22日(水) 14:48
久々におもしろいミステリーを読みました。

噂 (新潮文庫)噂 (新潮文庫)
荻原 浩

 ちびちび的プチ評:
  最後の最後ですべてがひっくり返る!

新潮社 2006-02
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海外ブランドの香水「ミリエル」を売り出すため、
口コミキャンペーンが仕込まれます。

「レインマンが出没して、女の子の足首を切ってしまう。
 でも、ミリエルをつけてれば、狙われないんだって」

女子高生の間で「噂」は広まり、
尾ひれをつけて都市伝説となります。
そこへ、足首のない女子高生の遺体が発見される。

捜査本部でコンビを組まされた小暮刑事と名島刑事。
40代でやもめとなった小暮刑事は、
本庁の捜査一課から所轄への異動願いを出した「変わり者」。
せめて毎朝、娘のお弁当だけは作ろうと、
がんばっています。
一方の名島刑事も、夫を過労死で亡くしています。
少年のような風貌ながら、
女性ならではの視点を活かして、捜査に臨む。

キャンペーンを仕掛けた側の、
美人社長・杖村やナンバー2の麻生。
広告代理店の加藤や西崎。
それぞれの個性がしっかりと書き込まれているので、
読んでいて飽きさせません。

被害者が女子高生だったこともあって、
渋谷の街を歩き回り、
ギャル語にとまどう小暮刑事。
これが実は伏線となっていて、
最後の最後の一文を読んで、
「あら〜」となります。
大団円がひっくり返っちゃう!

ミステリーとしてもおもしろい本ですが、
杖村社長が語る、
広告に乗せられる「愚かな消費者」
の姿は痛いな〜。
ただ、すべてが「計算」できるほど、
人間は単純ではないとは思いますけれど。
そして、自分たちが作り上げた「競争」に足元をすくわれて、
迷走する警察の姿も見えてきます。

階段を上った先には、また階段があり、
それを上ればまた階段がある。
他人を蹴落とし、足を引っ張り合い、捜査はそっちのけ。

警察小説にはたいていこんな話がでてきますが、
ホントにそんなだとしたら、
クライ職場だなぁ。
「出世はあきらめた」といいながらも、
熱い思いの残るおじさん刑事がいい味出してます。

『オーシャンズ13』
2007年08月21日(火) 19:01
オーシャンズ13

イケメン3人組 ちびちび的プチ評
  お決まりの展開で目いっぱい遊ぶ色男たちが
  笑わせてくれます。

製作年 : 2007年
製作国 : アメリカ
配給  : ワーナー・ブラザース映画
監督  : スティーブン・ソダーバーグ
出演  : ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、アンディ・ガルシア、
     ドン・チードル、バーニー・マック、エレン・バーキン、アル・パチーノ

自然で楽しい雰囲気作れてますね あらすじ:”オーシャンズ”のメンバーの1人、ルーベンが心筋梗塞で倒れた。原因は世界的なホテル王ウィリー・バンクの裏切り。だまされ、切り捨てられたショックで病に伏せたのだ。ルーベンの病床にかけつけたオーシャンやラスティーたちは、仇をとるべく行動を開始。狙う先は、バンクが新たにラスベガスに建設するカジノホテルだ。
最新鋭のセキュリティに守られたこの場所で、バンクの全てを奪うための戦いが開始された…!!(goo映画より)


3作目にきて、一番「成長」を感じさせてくれるのは、
やっぱりマット・デイモンでしょうね。
「坊や」扱いされていた彼が、
今作では重要な役を任されます。
100%の信頼を得られていないけれど、彼自身、
やっぱり不安になってウルトラCの手を借りるのですが。
そこがまた、かわいい。
意味があるのかないのか分からない「付け鼻」も、
結構笑えました。

そして意外とコケティッシュだったのがアル・パチーノ。
超ゴージャスなホテルの経営者で、
傲慢・傲岸な男なのですが、
観ている側からはとても「お茶目」に映ります。
そんな彼が凄んだときには、すごい迫力!
人間の裏表というか、落差をつけられる演技力が、
アル・パチーノの「さすが!」といわれるところなのでしょう。

相変わらず色男なジョージ・クルーニー。
1作目より地味になった気がするブラッド・ピット。
これは大人の「落ち着き」だと思いたい。
ホントに、出演者もセットも超ゴージャス!
なわりに、展開はゆっくりで、定石通りに進んでいきます。
なんだか「お年寄り」にも観やすいようにと
配慮されたのかしらんと、思ってしまいました。
その分、ちびちびには物足りなく感じちゃう・・・。
「12」の時は、時間が行ったり来たりだったので、
確かにちょっと混乱したのですが、
全体のテンポはよかったのに。

執念のバカ それでも、相変わらずゴージャスな世界で、
 楽屋ネタぽいやり取りもありつつ進んでいくので、
 単純に「楽しい」映画ではあります。
 舞台となったラスベガスのホテルは
 架空のものだそうですが、
 ぜひとも泊まってみたいと思わせるつくりでした。

「ジャパニーズ・モダン」は、
今のハリウッドの流行なのかな〜。





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