2008年01月25日(金) 23:39
![]() | 僕たちの戦争 荻原 浩 ちびちび的プチ評: ![]() ![]() ![]()
「死ぬな!」のメッセージが強烈です。 双葉社 2004-08 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2001年フリーター・健太と
1944年の海軍飛行訓練生・吾一が、
それぞれ海と空で事故に遭い、
時空を超えて入れ替わってしまいます。
お互いに「健忘症」と診断されますが、
自分自身も何が起こったのかよく分からない。
そのまま、
一方は軍隊の厳しいリンチを耐えることになり、
一方は2001年の日本の姿に絶望する。
吾一が見た「現代」の日本の描写は、
荻原さん流のユーモアたっぷりですが、かなり辛辣です。
モノと光と音と欲にあふれる生活。
自分たちが命をかけて守ろうとした国の、
50年後の姿がこれなのか?
と、ショックを受け、憤る吾一。
人生とは、いかにして「名誉ある死」を迎えるか。
そう考えてきた吾一にとって、大きな価値観の転換。
なんとか元の時代に戻ろうとしてきましたが、
それは即、死を意味します。
ここにはミナミというステキな恋人
もいる。
クスリの味しか感じられなかった甲羅(コーラ)も気に入った。
それでも、自分は戻りたいのか?
そして特攻隊に選ばれてしまった健太の方は、
この時代の考え方、生き方を受け入れられずに苦しみます。
「もうこれ以上、だれかが死ぬのを見たくない」
もう一度、21世紀に戻ってミナミに会いたい。
その一心で耐え抜く健太。
ヘラヘラしたお調子者だった頃からの変化も見物です。
二つの時代を通して一番に感じるのは、
「死ぬな!」「命をもてあそぶな!」
というメッセージ。
単なるタイムスリップ→ドタバタコメディにするのではなく、
戦争に散った若者を感傷的に書くのでもない。
この「位置取り」がとてもよかったです。
ラストは胸にじんわり沁みました。
2008年01月11日(金) 20:59
![]() | 神様からひと言 荻原 浩 ちびちび的プチ評: ![]() ![]()
読後感がとてもいい! 光文社 2002-10 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「お客様の声は神様のひと言」
が社訓の珠川食品に入社した佐倉凉平。
トップ会議の場で上司と大喧嘩し、
「お客様相談室」へ左遷されてしまいます。
そこは、別名・リストラ要員収容所。
配属されて脱毛症になったり、
体調不良になったりした社員もいっぱいいるとのこと。
およそ「会社員」には向いていないと思える凉平と、
嫌味な室長・本間と、セクハラオヤジで博打好きの篠崎。
ロリコンでパソコンオタクの羽村、
自己啓発の本を読み続ける体育会系の神保、
そして、超美人でありながら秘書室から飛ばされてきた宍戸。
相談室には個性豊かな面々が登場します。
特に、
ただのだらしないオヤジだと思っていた篠崎が中心となって、
ヤクザのゆすりに対抗する辺りはドキドキものです。
幹部はイエスマンぞろいで、誰も責任をとろうとせず、
くさいものにはフタ。
そんな体質の珠川食品に愛想が尽きて、
辞めたいと思う社員は多いけれど。
サラリーマンは
「滞納した家賃」や「妻と娘」を
人質にとられているようなもんだ。
と、ぼやく先輩。この言葉は大きいなぁ〜。
何もかもを失っても、これだけは手に入れたい。
それを見つけた凉平は、
大きな爆弾
を置き土産に、
自分の信じた道を行こうとする。
こんなこと、
ホントにできれば爽快!なんでしょうけどね・・・。
世の中の「会社員」の皆さんへの応援歌といえるかもしれません。
そうそう。
ちょろっと「ユニバーサル広告社」が登場します。
こういう使い方、大好き。
意外なことに、
クレーム処理のプロだった篠崎の仕事ぶり。
『となりのクレーマー』と合わせて読むと
おもしろいかもしれません。
2008年01月05日(土) 21:50
![]() | なかよし小鳩組 荻原 浩 ちびちび的プチ評: ![]() ![]()
ユーモア満載のドタバタ劇。最後はホロリとさせられます。 集英社 1998-10 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『オロロ畑でつかまえて』の続編です。
万年倒産寸前の広告代理店ユニバーサル広告社に舞い込んだ、
久々の大仕事はヤクザ企業のイメージアップ戦略。
スキンヘッドに趣味の悪いネクタイ、
アンテナ付きのベンツに三白眼。
登場するヤクザ達は精一杯凄んでいるものの、
組の名前が「小鳩組」。プププッ
「ヤクザなんか人間のクズや!」
と叫ぶ石井社長とヤクザの対面は、
コメディ映画を観ているよう。
企業の活動内容を説明する件がまた笑えます。
「気持ちよくなるクスリ」の販売→医薬品販売業
ですもん。
この小鳩組、またの名をピースエンタープライズという会社の、
シンボルマーク、テレビCM、イベントを企画するわけです。
無理だっちゅーの!
というわけにもいかず、
アル中のコピーライター杉山はじめ、
ケーキ大好き石井社長、ぶっ飛びロッカーの村崎が奮闘する。
今回のお話では、
広告の裏側の話だけでなく、
杉山の別居中の娘・早苗が「味」を出してくれています。
サッカー大好き
、
勉強は全くダメという早苗ちゃん。
とっても男らしくてかわいらしい。
ところが、「新しいお父さん」と上手くいかず、家出して、
杉山のところに預かられることになる。
そこで、
以前には出来なかった「愛情を注ぐ」という行為に
目覚める杉山。娘に対して。そして、別れた元・女房に対して。
ラストで、
「かっこいい親父」の姿を覚えていて欲しい!
その一心で杉山がやり遂げようとする「仕事」には、
ホロリとさせられます。
ぜひ、今後の展開を読みたいな〜
と思わせてくれる一冊でした。
2007年11月27日(火) 23:43
![]() | オロロ畑でつかまえて 荻原 浩 ちびちび的プチ評: ![]() ![]()
軽快な語り口で、バカバカしくも面白い! 集英社 1997-12 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
人口わずか300人という山間の村・牛穴村。
祭りの神輿を担ぐ人数が足りないということで、
青年会が「村おこし」をすることになりました。
企画立案を請け負ったのは、
東京の弱小代理店・ユニバーサル広告社です。
不渡りが出そうになるたび、
「海がみたい
」と言い出す社長以下3人が
初めて牛穴村を訪れた辺りから、
ドタバタ振りが加速していきます。
村の名物は、オロロ豆にヘラチョンペ、ゴンベ鳥。
他には、怪しすぎるシャーマンと、
名産品の作り方を忘れてしまった老人などなど。
これではどうにもならないと、
ユニバーサル広告社が立てた企画は
「牛穴村の竜神湖で恐竜発見!
」
というものでした。つまり、捏造。
めでたく、全国からの注目を浴び、
観光客やマスコミが押し寄せる。
でも、純粋な青年たちである青年会のメンバーや
広告社の人たちは、
いつバレるかとヒヤヒヤしている。
超ローカルな牛穴の風俗と、
東京ブランドの対比がよく描かれていて、
とても面白く読みました。
嘘から始まった恐竜騒動が思わぬロマンス
を呼び、
クリエイターの創作心
をくすぐり、
そしてラストでは意外な展開が待っています。
荻原さんのユーモアセンスは、
ちびちびには合うんですよね〜。
全体を通して「のんき」な感じがいいですよ。
2007年08月22日(水) 14:48
久々におもしろいミステリーを読みました。
海外ブランドの香水「ミリエル」を売り出すため、
口コミキャンペーンが仕込まれます。
「レインマンが出没して、女の子の足首を切ってしまう。
でも、ミリエルをつけてれば、狙われないんだって」
女子高生の間で「噂」は広まり、
尾ひれをつけて都市伝説となります。
そこへ、足首のない女子高生の遺体が発見される。
捜査本部でコンビを組まされた小暮刑事と名島刑事。
40代でやもめとなった小暮刑事は、
本庁の捜査一課から所轄への異動願いを出した「変わり者」。
せめて毎朝、娘のお弁当だけは作ろうと、
がんばっています。
一方の名島刑事も、夫を過労死で亡くしています。
少年のような風貌ながら、
女性ならではの視点を活かして、捜査に臨む。
キャンペーンを仕掛けた側の、
美人社長・杖村やナンバー2の麻生。
広告代理店の加藤や西崎。
それぞれの個性がしっかりと書き込まれているので、
読んでいて飽きさせません。
被害者が女子高生だったこともあって、
渋谷の街を歩き回り、
ギャル語にとまどう小暮刑事。
これが実は伏線となっていて、
最後の最後の一文を読んで、
「あら〜
」となります。
大団円がひっくり返っちゃう!
ミステリーとしてもおもしろい本ですが、
杖村社長が語る、
広告に乗せられる「愚かな消費者」
の姿は痛いな〜。
ただ、すべてが「計算」できるほど、
人間は単純ではないとは思いますけれど。
そして、自分たちが作り上げた「競争」に足元をすくわれて、
迷走する警察の姿も見えてきます。
階段を上った先には、また階段があり、
それを上ればまた階段がある。
他人を蹴落とし、足を引っ張り合い、捜査はそっちのけ。
警察小説にはたいていこんな話がでてきますが、
ホントにそんなだとしたら、
クライ
職場だなぁ。
「出世はあきらめた」といいながらも、
熱い思いの残るおじさん刑事がいい味出してます。
![]() | 噂 (新潮文庫) 荻原 浩 ちびちび的プチ評: ![]() ![]()
最後の最後ですべてがひっくり返る! 新潮社 2006-02 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
海外ブランドの香水「ミリエル」を売り出すため、
口コミキャンペーンが仕込まれます。
「レインマンが出没して、女の子の足首を切ってしまう。
でも、ミリエルをつけてれば、狙われないんだって」
女子高生の間で「噂」は広まり、
尾ひれをつけて都市伝説となります。
そこへ、足首のない女子高生の遺体が発見される。
捜査本部でコンビを組まされた小暮刑事と名島刑事。
40代でやもめとなった小暮刑事は、
本庁の捜査一課から所轄への異動願いを出した「変わり者」。
せめて毎朝、娘のお弁当だけは作ろうと、
がんばっています。
一方の名島刑事も、夫を過労死で亡くしています。
少年のような風貌ながら、
女性ならではの視点を活かして、捜査に臨む。
キャンペーンを仕掛けた側の、
美人社長・杖村やナンバー2の麻生。
広告代理店の加藤や西崎。
それぞれの個性がしっかりと書き込まれているので、
読んでいて飽きさせません。
被害者が女子高生だったこともあって、
渋谷の街を歩き回り、
ギャル語にとまどう小暮刑事。
これが実は伏線となっていて、
最後の最後の一文を読んで、
「あら〜
」となります。
大団円がひっくり返っちゃう!
ミステリーとしてもおもしろい本ですが、
杖村社長が語る、
広告に乗せられる「愚かな消費者」
の姿は痛いな〜。
ただ、すべてが「計算」できるほど、
人間は単純ではないとは思いますけれど。
そして、自分たちが作り上げた「競争」に足元をすくわれて、
迷走する警察の姿も見えてきます。
階段を上った先には、また階段があり、
それを上ればまた階段がある。
他人を蹴落とし、足を引っ張り合い、捜査はそっちのけ。
警察小説にはたいていこんな話がでてきますが、
ホントにそんなだとしたら、
クライ
職場だなぁ。
「出世はあきらめた」といいながらも、
熱い思いの残るおじさん刑事がいい味出してます。








