人生万事塞翁が馬。 でも、なんだかこんがらがってしまうことが多い日々。
           
恩田陸『MAZE』
2007年09月01日(土) 10:50
MAZE(めいず)MAZE(めいず)
恩田 陸

 ちびちび的プチ評
  奇妙な世界でのドキドキ体験。重くないホラーです。

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アジアの西の果てにあるという白い矩形の建物。
そこは「存在しない場所」、「有り得ぬ場所」と
呼ばれています。
外見は「豆腐」のようですが、
妙に人を惹きつけるものがある。
でも、そこには、あるルールがありました。
それは、

「人間消失のルール」

です。

幼馴染の神原恵弥に依頼され、
謎の解明にあたるのが時枝満です。
同行する米軍人のスコット、現地のエライさんの息子というセリム。
「豆腐」の謎と平行して、
彼らのキャンプにも事件が起きる。
そもそも、恵弥は何者なのか。
「豆腐」をどうしようというのか。

謎が謎をよんで、一つの答えが出るたび、別の答えがひっくり返り、
と、ドキドキして飽きさせません。
ミステリーとしては静かに進行していきますが、
心理的にとても追い詰められる。
さすがの筆力です。

主人公の神原恵弥は、
男性ですが、かなりなよなよした女言葉を使います。
そのせいか小説全体が、明るくて軽快です。
ホラーなのに、明るいってのもヘンですが。
そもそも彼自体が、かなりの曲者なので、
あの言葉遣いに騙されちゃうな〜。

同じく神原恵弥が登場する
『クレオパトラの夢』という本があります。
どちらから読んでも大丈夫でしょうが、
『MAZE』で恵弥に慣れてから読んだ方がいいかも。




恩田陸『劫尽童女』
2007年07月15日(日) 23:49
恩田陸『劫尽童女(こうじんどうじょ)』を読みました。
恩田作品によく出てくる「秘密組織」ですが、
今回のは、ちょっと血の匂いのする組織です。

劫尽童女劫尽童女
恩田 陸


 ちびちび的プチ評
  遺伝子操作は個性か、進化か。遠くない将来、現実化するのかも。
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アメリカ軍の秘密組織「ZOO」から遁走した伊勢崎博士。
娘の遥は「普通の子ども」ではなく、
博士の研究の集大成として超能力を与えられています。
追い、追われするうちに博士は病死。
残された遥は、ZOOに対抗する、これまた秘密組織にかくまわれる。

物語のはじめで10歳だった遥は、
自分の能力を特に疑いもせずに受け入れています。
人を殺すのもためらわない。
それは、生き延びるための手段だから。

ところが、かくまわれた先の孤児院で出逢った
ボランティアのおばさんや、
シスターの愛情に触れるうち、疑問が沸き起こるのです。
そして、成長する身体と心。進化する能力。
遥はだんだんと自分に不安を感じ始めます。

行くところに必ず起こる殺戮。
血塗られた手。
作られた「怪物」である自分の将来は?

親の勝手でプログラミングされてしまった遥の「個性」は、
やがて遥自身にも手に負えないものになってしまいます。
でも、相談できる相手もいない。
唯一の同士は、
同じく「怪物」のシェパード・アレキサンダーだけ。
誰とも分かち合えない孤独と不安を抱えた遥は、
意識しないうちに、またまた進化する。

序盤では、神経戦から肉弾戦へとテンポよく進むので、
ぐぐっと引き込まれます。
が、どんどんと話が大きくなり、
核施設の爆発となった辺りで、
ちょっと話が現実離れしていきます。
いや、もともとSFではあるのですけれど。

遥は父の遺言「すべて焼き尽くせ」を果たすため、
まずはZOOから逃げ、最後には自分の居場所を探します。
捕まれば実験材料とされるか、マスコミの餌食となるか、
証拠隠滅されるか、いろいろと想像はできます。
が、遥は現に生きている子どもです。
ただ、社会にも、ZOOにさえも、
受け入れる準備ができていなかった。
と、考えると、父の伊勢崎博士の勝手さに、
怒りがこみ上げてしまうのですが。

現実社会でも、「遺伝子組み換え」に
熱心に取り組んでいる企業はあります。
食糧不足に備えられたり、
天候や害虫に左右されずに農作物が収穫できる、
というような利点ばかりが強調されています。
が。
その後のこと。
50年後、100年後の安全性や、
それを口にしたものの遺伝子上の問題は
クリアされてはいません。
遥の物語を読むと・・・やっぱり、ちょっと怖くなりますね。
だって、
遥の孤独を受け止められる大人は、
たぶんいないでしょう。

近未来に起こりうるであろう遺伝子問題と、
親から子へと受け渡される歴史の問題。
古くて新しいテーマです。
ラストで遥が選んだ道が、
明るい未来につながっているのであればいいのですけど。

恩田陸『不安な童話』
2007年07月02日(月) 23:34
久しぶりに恩田陸さんの本を読みました。
25年前の殺人をめぐる推理小説です。

不安な童話不安な童話
恩田 陸

 ちびちび的プチ評
  ものすごく心理的な圧迫感があります。
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主人公の万由子は、
25年前に一大ブームだったという画家・高槻倫子の回顧展に行き、
奇妙な感覚を味わいます。
「私はここにある絵を全部知っている」
「私はハサミで刺し殺されるのだ」
海辺の情景を目にしながら、失神する万由子。

翌日、倫子の息子の秒が訪ねてきて言うことには、

「あなたは母の生まれ変わりです」

ここから、秒と、
彼女の上司である大学教授の浦田先生と、
幼馴染の俊介が、
にわか探偵よろしく動き回ることで、
事件が次々と起きてしまうのです。
謎の脅迫電話、血塗られた玄関、襲いかかる不審者と、
推理小説の王道はちゃんと押さえてあります。

倫子と万由子の共通点はというと、
「失せもの探しの名人」だということ。
周りにいる人の思念が映像となって見えちゃうのですね。
万由子は言います。

どこにしまったか、本人は忘れているだけで、
記憶の引き出しにはちゃんと残っている。
私は開いた引き出しをのぞくだけ。

「記憶」という機能はホントに摩訶不思議。
本書のテーマになっている「生まれ変わり」についても、
ダライラマの例や双子の女の子の話が引かれています。
でも、そもそも「生まれ変わり」とは、
どういった事態なのか。
オリジナルな人格が永遠に行き続けることなのか。
フロッピーのように入力された情報が持ち越されているのか。
この、万由子の疑問が、
うまく事件の鍵と結びつく。
謎解きのシーンはドッキドキですよ。

果たして、万由子は本当に倫子の生まれ変わりなのか。
そして倫子を殺したのは誰なのか。
これについては、
ラストに意外な結末が用意されていました。
殺人についても、生まれ変わりについても、
ちゃんと前半に伏線がしいてあって、
読み終わったとたんに、
もう一度読み直したくなりました。



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