人生万事塞翁が馬。 でも、なんだかこんがらがってしまうことが多い日々。
           
小池真理子『恋』
2008年01月16日(水) 21:58
恋 (ハヤカワ文庫JA)恋 (ハヤカワ文庫JA)
小池 真理子

 ちびちび的プチ評
  激動の時代と人間の深い絆を描いていて秀逸。

早川書房 1999-04
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学生運動真っ盛りの70年代初頭。
運動家の恋人と別れたばかりの布美子は、
イギリス小説の翻訳を手伝うアルバイトを始めます。
仕事先は大学教授である信太郎の家。
信太郎や、元子爵の娘である妻の雛子に対して、
最初は自分とは違う「ブルジョワ階級」の人たち、
と距離を置いていた布美子ですが、
だんだんと彼らの世界に惹かれていきます。

信太郎と布美子が読み込んでいく『ローズサロン』という官能小説と、
雛子を中心とした三人の関係が絶妙に絡み合っていて、
非現実的な生活に生まれた「絆」が少しずつ見えてきます。
そして、時代との対比。
浅間山荘での事件を頂点に、
転換期を迎えた革命運動と日本社会に呼応するように、
三人の関係にも悲劇的な結末が待っている。

布美子がそれまで知らなかった世界に触れ、
のめりこむように夫妻に惹かれていく辺りは、
なんだか微笑ましい。
おずおずとしていて、かたくなで、意地っ張りで。
小さな女の子の所業を見ているようです。
彼らの世界が「閉じた世界」である分、
関係も濃密になるし、それが「すべて」になってしまうのでしょう。
その先に悲劇が待っているわけですが。

ただ。
最後の一文に、人の絆の深さを強く感じました。
こんなにも強く誰かを愛して信じ合うことができたら、
これはこれで幸せなのかもしれないな〜。






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