人生万事塞翁が馬。 でも、なんだかこんがらがってしまうことが多い日々。
           
篠田節子『聖域』
2007年12月06日(木) 23:22
聖域聖域
篠田 節子

 ちびちび的プチ評
  「死」の匂いプンプンで怖いけど惹き込まれます。

講談社 1997-08
Amazonで詳しく見る
by G-Tools


山稜出版に勤める実藤は、
退職した社員の荷物から未完の小説原稿を見つけます。
「水名川泉」という作家の書いた時代小説に
一気に惹き込まれ、どうしても結末が欲しいと思いつめる。
まずは彼女の居所を探そうとするのですが、
これまでの担当編集者、
付き合いのあった大御所の作家などが、

「泉には関わるな」

と、実藤をとめる。
諦めきれず、行方を追ううち、
ある新興の宗教団体へ行きつきます。

ついに探し当てた泉と実藤の対決が、
一番の見所(読みどころ?)です。

まず、作家VS.編集者の闘い。
身を削るようにして言葉を紡いでいく作家と、
書き上げてからなら力尽きてもいいと考える編集者。
「人間としてどうよ?」と思われるかもしれませんが、
実際、創造の現場というのは壮絶なものです。
小説という虚構の世界の裏側をのぞくようで、
ドキドキさせられました。

そして、あの世とこの世をつなぐ存在となっていた泉と、
世迷言は信じないとはねつける実藤との対決。
この辺りは宗教哲学に触れる内容なので、
仏教に興味のある方、民俗学に造詣のある方には、
ぜひお奨めします。

人間は、生きている間には「死」を経験できず、
死んだときには、「我」がなくなってしまう。
その意味では不完全な存在だ。
と、哲学者のハイデガーが言っていましたが、
まさしくこの言葉をなぞったような小説です。
ただ、とても重い。
電車の中で読んでいたら、気分が暗くなっちゃいました。
そして、乗り過ごしてしまう・・・。
それくらい、夢中で読める本です。

 | HOME | 

Designed by GALPOP BLOG + GALPOP.NET