人生万事塞翁が馬。 でも、なんだかこんがらがってしまうことが多い日々。
           
『夕凪の街、桜の国』
2007年08月03日(金) 17:51
夕凪の街 桜の国

桜の国編  ちびちび的プチ評
  一発の爆弾が破壊する生活と人生と未来。
  戦争をしたい人たちに観てほしい。



製作年 : 2007年
製作国 : 日本
配給  : アートポート
監督・脚本:佐々部清
原作  : こうの史代
出演  : 田中麗奈、麻生久美子、吉沢悠、中越典子、伊崎充則、金井勇太、藤村志保、堺正章

夕凪の街編 あらすじ:
原爆投下から13年後の広島。そこに暮らす平野皆実は、打越に愛を告白される。だが彼女は、原爆で父と妹を失い、自分が生き残っているという事が深い心の傷になっていた。そんな彼女の想いを打越は優しく包み込むが、やがて皆実に原爆症の症状が……。
半世紀後。今は東京で暮らす皆実の弟・旭は、家族に内緒で広島の旅に出る。そんな父を心配する娘の七波は、ひょんなことから友人の利根東子と共に、旭の後を追って広島へ向かう……。(goo映画より


昭和33年の広島を舞台とする「夕凪の街」と、
現代の東京と広島を旅する「桜の国」の連続短編です。
「夕凪の街」では、
原爆を生き延びた皆実と母、水戸に疎開した弟が登場します。
母の方は、一週間ほど視力を失っていたので、
原爆が落とされた直後の「地獄」を見ていません。
が、皆実は、妹をおぶって市内をさまよい、
その背中で妹は息を引き取ります。「長生きしてね」と言い残して。

うちは幸せになったらいけんような気がして。

普通におだやかに暮らしている26歳の女性が、
そんなことを思わなくてはいけないなんて。
皆実は、愛する人からのプロポーズにも、
素直に喜べない。
誰かに「死ねばいい」と思われた自分、
そして、生き延びてしまった自分。
麻生久美子さん演じる皆実が、
あまりにフツーでいい人なので、
彼女が死に際にはく台詞にドキリとしました。

「なぁ、うれしい?やった、また一人殺せた!って、ちゃんと思うてくれとる?」

「いい人」からの「毒」だからこそ、
ものすごい効き目があります。

そして、「桜の国」は、
皆実の弟・旭とその娘・七波のお話です。
この話で、ちびちびは今まで知らなかったことを
知ることができました。
それは、家族に「被爆者」がいることは、
語られない、隠された事実であるということ。
当時からも偏見、差別と闘ってきた人たちは、
それを家族に話すことをやめてしまう。
もちろん、見聞きした「生き地獄」についても。

語らず、語られずに成長した七波は、
突然、広島に旅した父を尾行することで、
家族のルーツを知ることになります。
七波を演じている田中麗奈さんだけが、
周囲とは少し違ってフワフワしているように見えます。
が、彼女は「家族」と向き合い、
命のつながりを感じ、生まれてきた意味を知り、
タブーを乗り越え、地に足をつけて「生きる」ことを選択するのです。
ラストシーンの彼女の表情が
とても深くてよかったです。

原爆は、その場にいた何百人もの命を奪っただけでなく、
何世代にもまたがって傷跡を残している。
その現実が、声高に叫ばれるのではなく、
静かにメッセージとして送られてきます。
これは決して「しょうがない」で済まされる話じゃありません。

この日映画館にいた半数ほどの人が
ご年配のかたでした。
で、その方たちほど、涙しておられました。
遠い日の話とならないように。
語り継いでほしい。
観て欲しい映画でした。

こちらが原作となったこうの史代さんの漫画です。
夕凪の街桜の国夕凪の街桜の国
こうの 史代

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