人生万事塞翁が馬。 でも、なんだかこんがらがってしまうことが多い日々。
           
山本一力『蒼龍』
2007年06月29日(金) 22:28
第77回オール讀物新人賞を受賞した『蒼龍』を含めた
小説集『蒼龍』です。

蒼龍蒼龍
山本 一力

 ちびちび的プチ評:
  山本さんの作家デビューまでの実録小説。夫婦愛があたたかい。

文藝春秋 2002-04
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大店の主から請われて、
指物職人から手代へ転身した弥助の物語「のぼりうなぎ」。
弥助は企業改革の旗手として赴くわけですが、
先輩からは陰惨ないじめを受け、小僧からも無視される日々。
弥助の誠意と彼を支える深川の人情話です。

酒問屋の若旦那となった高之助が、
亡き父から教えられた商魂のお話「節分かれ」。
武家のしきたりとメンツに、
命のあり方を教えられる「菜の花かんざし」。
盆栽を通して結ばれた他藩の武士の友情を描いた「長い串」。
どれもとっても味わい深くて、胸にしみます。
他人との関係はもちろん、
親子や友情といった「心」のあり方が、
うまい形でつまっているのです。
時代物ではありますが、
山本さんはきっと、現代社会を念頭にして描かれたのでしょうね。

そして、途方もない借金を背負ってしまった若夫婦が、
瀬戸物屋の新デザイン募集に夢をたくす「蒼龍」は、
山本さんのデビューまでの生活を
下敷きにしているとのこと。
2億円もの借金を、作家になって返済しようとは、
恐れ入りますてな感じですが、
発表を待つまでのドキドキ感。
妻の信頼と励まし。
そして、何度も描くうちに
彼がホンモノの絵描きになっていくところは、
なんとも・・・山本さんの気持ちを反映しているようで、
切なくなりました。

とても読後感のいい小説集です。

山本一力『深川駕籠』
2007年06月28日(木) 10:59
最近は山本一力さんを「作家買い」しております。
『深川駕籠』は、深川の駕籠かきを主人公にした、
人情と友情のあつ〜いお話です。

深川駕籠深川駕籠
山本 一力

 ちびちび的プチ評
  駕籠かきのコツとメンツとプライドが詰まってます。

祥伝社 2002-09
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両替屋の総領息子でありながら臥煙となったために、
実家から勘当され、深川で駕籠かきになった新太郎。
勝浦の漁師から相撲部屋に入門し、
ケンカを助けてもらった縁で新太郎の相棒となる尚平。
この二人の関係がとてもステキです。

江戸っ子らしく、さっぱりした気性で、
でも頭に血が上りやすい質の新太郎を、
普段は無口な尚平がうまくとりなしている。
そして、
深川から高輪までの往復駆けっこ+泳ぎレースの時には、
尚平のアドバイスが新太郎を助けるのです。
ううん。アドバイスだけじゃないですね。
熱をおしてサポートしてくれた相棒に応えようと、
新太郎は死力を尽くすのです。
おかげで「ほのかな三角関係」にも
変化がおきてしまうのですが。

二人があこがれる「今戸のお軽」ことおゆき。
業突く張りに見えて意外と人情派だった裏店の主人・木兵衛。
誰よりも駕籠かきとしてのプライドを備えている寅。
仁義に熱い賭場の親分・芳三郎。
そして、今回もちょこっと登場している猪之吉親分。
登場人物それぞれがとてもユニークで、
お話をよく盛り上げてくれてます。

「開かずの壺」の章では、
その芳三郎と猪之吉親分の「でっかさ」に、
新太郎は「オレなんかまだまだだなぁ」と感じる・・・。
わけですが、
その「でっかさ」を、もうちっと書き込んでもらえればな、
という気もしました。
猪之吉親分びいきのちびちび的感想です。

とはいえ。
この小説を一言で言うならば、
「かっこよさ」ではないかと思います。
あわやケンカとなりそうだった鳶の辰蔵、
角突き合わせてばかりの寅や、ひょんな出会いをした芳三郎。
でもみんな、他人を「ホンモノ」と認め、
「敬う」気持ちを持っているのです。そして、「恩」を忘れない。
その姿は、とてもとてもかっこいいです。
こんな男前な男性に、最近会ってない気がするな〜。

ちょっと余談ですが。
以前、映像の仕事をしていたときに、
「大名屋敷に駕籠が入っていく」というシーンを撮りました。
いやぁ、このシーンにすごく苦労したのですよ。
なんてったって、駕籠がかつげないんですもん。
このときは、新太郎と尚平がかついでるような辻駕籠ではなく、
お大名様が乗るような黒塗りの立派な駕籠だったのですが、
前後あわせて4人の役者で運ぶ予定でした。
が。
みんな肩が痛くて、棒を乗せて三歩と進めない。
もちろん、駕籠には誰も乗っていないのですよ。
でも、持ち上げるだけで精一杯。
一応、かなり鍛えた体格のいい役者を集めたのですが、
飛びぬけて大きい子は逆に使えない。高さがあわなくなっちゃいますから。
で、結局、着物の下にタオルを何枚を重ねてクッションにし、
ヒ〜ッヒ〜ッ言いながら運んでもらったのでした。

駕籠をかつぐ方も筋力・胆力がいるのでしょうが、
乗る方にもコツがあることがお話に出てきます。
この辺りを読むと、
「相方」のことを「相」と呼ぶ理由がわかる気がします。

『憑神』
2007年06月27日(水) 22:39
『憑神』

にぎやかな宴会  ちびちび的プチ評
  迷いながら創って、慌しく終わった感じです。

製作年 : 2007年
製作国 : 日本
配給  : 東映
監督  : 降旗康男
原作  : 浅田次郎
撮影  : 木村大作
出演  : 妻夫木聡、夏木マリ、赤井英和、香川照之、西田敏行

どすこい! あらすじ:
幕末。別所彦四郎は、婿養子に行った先から離縁され、兄夫婦の家に居候という、肩身の狭い思いをしていた。
あるとき彦四郎は、旧友、榎本武揚と再会する。そば屋の親父が言うには、榎本が出世したのは、向島にある「三囲り(みめぐり)稲荷」にお参りしたからだという。
その帰り道、酔った彦四郎は「三巡り(みめぐり)稲荷」を発見。ここぞとばかりに神頼みする彦四郎だったが、それは「みめぐり」違いで、災いを呼び寄せるお稲荷様だった…。(goo映画より)


ちびちびは映画に限らず、ドラマも舞台も好きです。
要は、「お芝居」が好きなのです。
お芝居を見る上の大前提として、

その役が、その役に見えること。

が、あると思います。
その点でいくと、ぜーんぜん、
そうは見えない人たちがいっぱいの映画でした。

元夫婦なのに、元夫婦に見えない。
相撲取りなのに、相撲取りに見えない。

はぁ〜。
も少し、ちゃんと役を作って、芝居を見せて欲しい。

愛し合う二人? 例えば。
 妻夫木聡さん演じる彦四郎と、
 元妻・八重の笛木優子さんのシーンです。
 貧乏神を義父(八重のお父さんね)に振ったため、
 家屋は全焼、一文無しになってしまいます。
 元妻と一人息子の身を案じた彦四郎がやって来て、
 握り飯を渡し、なぐさめ、キスをする。


この夫婦、愛し合っていたのに父に引き裂かれ、
会ったのは一年ぶりくらいのはず。
なのに、なぜにそんなに他人行儀なの?
なぐさめて励まそうとしてる人が、そんな口調でしゃべるかいよ。
夫婦のキスが、なんでそんなにぎこちないのさ。
そんで、なんでそんなに冷めてるのさ。
まーったく、「愛情」が伝わってこない。
ちびちびの胸にはスーッと冷たい風が吹きました。
だって、明らかに。
夫は遠慮してるし、妻は嫌がってるし。

映画を通して、とても慌しい雰囲気が伝わってくるのです。
まるで大急ぎで作ったかのような・・・。
原作よりも「運命を自分で切り開こうとする若侍」をふくらませて、
神との対決にも、おもしろい結末を作ったと思います。

でも、前半で積み上げていくものがないので、
なんとも中途半端にクライマックスを迎えてしまいます。
落ちもカタルシスもないまんまです。
この映画を観て、

運命に流される人生よりも、
自分でつかもうとする方が愉快だぜ!

とか、

そのためには、責任も追うんだよ〜

とか、思う人がいるのかしらん。
そう!
どっちに行きたいのかが、はっきり分からないのですよ!
人情劇なのか、青春劇なのか、はたまたコメディなのか。
これは脚本の失敗では?
画はとてもきっちりしっかり詰まっていましたから。

エンディングで、いきなり現代になり、
原作者の浅田次郎さんが登場します。
そして、米米CLUBクラブの「御利益」の歌。

なんだ、やっぱりコメディにしたかったのでは?
と思ってしまいました。

いつもの評価だと、0.5個にしたかったのですが、
絵文字を半分には切れないので、
やむなく「雪だるま」にしときました。

メイキング 憑神メイキング 憑神
妻夫木聡

 これは、ちょっと、観てみたい。

東映 2007-05-21

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御利益(初回生産限定盤)
御利益(初回生産限定盤)米米CLUB

 いかにもで、らし〜い感じの曲です。

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憑神憑神
妻夫木聡; 香川照之; 西田敏行; 赤井英和; 江口洋介; 佐藤隆太; 夏木マリ; 森迫永依 降旗康男

TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D) 2007-12-07
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浅田次郎『憑神』
2007年06月26日(火) 22:28
「映画がよかったよ〜」という友人に薦められて、
浅田次郎さんの『憑神』を読んでみました。

憑神憑神
浅田 次郎

 ちびちび的プチ評
 コミカルでありながら、武士道を貫く主人公の姿が潔かった。

新潮社 2005-09-21

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主人公の別所彦四郎は、聡明で正義感が強く、
忠義孝をわきまえ、文武両道の貧乏侍です。
婿入り先を追い出され、職はなく、小遣いもない。
「どうか出世して、妻子と共に暮らせますように」
と手を合わせた祠が「三巡稲荷」という怪しいもの。
おかげで「神様」に憑かれるわけですが、
カミはカミでも・・・といった感じで、
軽〜く読めるコミカルな時代小説です。

正義感が強いけれど時代からずれている主人公。
お馬鹿だけれどすんごい神力を持つ仲間。
口達者でお調子者の屋台のオヤジ。
浅田作品おきまりともいえるキャラクターのところに
次々とやってくるカミサマが笑えます。
それをまた、
鼻持ちならない役人やヘタレな兄がまぜっかえしてくれる。

話はリズムカルだし、笑いながらも締めるところは締めて、
ではあるのですが。
浅田作品は、ちびちび的に笑いとイライラが半々です。
この「軽さ」なのかな。
笑わせてくれるのはいいのだけれど、
ちょっとしつこい感じがするのです。

でも。最後まで読んで、ちょっと考えさせられました。
小説の時は幕末で、しかも黒船来航から大政奉還の頃です。
800年続いた武士の時代が終わりを迎え、
しかもやっかいなカミに憑かれた彦四郎は、
武士としての「死に場所」を求めます。

260余年続いた太平を貪って、矜りを失った武士。
変化したのは時代なのか、武士なのか。
三河安祥の時代より徳川家の家臣として仕えた父祖の歴史。
個は家に仕え、家が家に仕える。
そして自分は、日本人である前に武士である。
薩長や勝たちが新しい国を造るのは結構。
しかし。
この時代も悪くはなかったと叫ぶのが自分の役割では・・・。

これって。
なんだか「今」の時代みたい。

時代遅れなものは捨て去り、
新しい時代に合うものを創ろうではないか。

そのまま、自民党のポスターになりそうですね。

彦四郎は、古い時代に殉じ、新しい時代の礎となります。
仲間やカミの諫言に耳を貸さず、
自分で時代の幕引きを選び、出陣する姿はアッパレ!です。
古くても、いいものはいいと残したい。
その決断ができる勇こそ武士道なのかな、と思いました。





新井素子『もとちゃんの痛い話』
2007年06月25日(月) 23:28
これまで、たいがいあちこちの病院にかかりましたが、
未だ婦人科にだけは行ったことがありません。
「いい加減、検診にだけは行ったほうがいいよ」
と言われながら、それさえも怖くて・・・。

たまたま本屋さんで新井素子さんの本をみかけ、
立ち読みしてみると、まさしく婦人科へ言った話が!
というわけで、買ってきて読んでみました。

もとちゃんの痛い話もとちゃんの痛い話
新井 素子

 ちびちび的プチ評
 読んでてかなり痛いです。想像するともっと痛いです。
角川書店 1997-04
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ことの起こりは、左胸に感じた違和感だったそうです。
ヘンだな→おできができてる→膿が出た!
この繰り返し。
治療しても何度も再発してしまうという病気です。
最初は乳腺炎だと思われていたのですが、
結局は「アテローム」という病気だったとのこと。
この膿をとる(というか、掻きだす)治療が痛い!
深さ3センチの傷口にガーゼを突っ込むだなんて、いたぁい!!

最終的に4つの病院を回り、手術となるわけですが、
「麻酔が効かない」体質ということが
手術室に入ってから判明するのです。
これまでに局所麻酔を受けているのに、
悶絶治療という苦役を乗り越えた素子さん。
もっと早く、気付かないのか?お医者さん!と思ってしまいます。
このほか、歯医者さんでの治療談も、十分、痛い話です。
そんな痛い痛い話が、
素子さん独特の語り口調で書かれていて・・・、
ご本人には悪いけど、かなり笑える話でもあります。

でも。
それなりの年齢で、胸に違和感となると、
やっぱり疑われるのは乳がんです。
なので、
素子さんもマンモグラフィー検査やなんかを受けるわけです。
ちびちびの友人エスパー子もマンモ経験者で、
「それはそれは痛かった
という話を聞かされておりました。

素子さん曰く、
マンモのレントゲンというのは、
胸を機械でサンドイッチして撮影するのですね。
なので、胸の大きな西洋人には可能でも、
比較的小ぶりな胸の人が多い日本人には、
厳しい検査なのではないか、とのこと。
本書の中のイラストを見て、ちびちびも初めて知りました。

こりゃ、痛いわ。

ましてやエスパー子は、かなりささやかな作りの胸。(ゴメン!)
「はさむために苦労した」という意味が、
やっと分かったのでした。

新井素子さんといえば、中学くらいの頃、
さんざん、何度も何度も、飽きるくらいに読みました。
『星へ行く船』シリーズや、『絶句・・・』なんか
大好きでした。
ここのところ遠ざかっていたのですが、
やっぱり読み始めると、
彼女の文章のリズムと自分がシンクロしていっちゃうのです。
なので、彼女の悶絶する痛みがそのまま実感されて・・・。

うぎゃー、痛いよ〜!!!

一緒になって泣きました。
ううっ、また病院が遠のいてしまう気がします。


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