2008年05月26日(月) 23:14
![]() | インコは戻ってきたか (集英社文庫) 篠田 節子 ちびちび的プチ評: ![]() ![]()
内容が盛りだくさんでお腹いっぱいになります。 集英社 2004-05 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
女性誌の編集をしている響子は、
「究極のハイクラス・リゾート」の取材で
キプロス島を訪れることに。
でも、一緒に行くはずだったイケメン・カメラマンはおじさんに代わり、
「東地中海の真珠」と呼ばれるはずのリゾート地は、
内戦で不穏な空気が漂う。
それでも、カメラマンの檜山はサクサクと仕事をしてくれ、
いろいろと気遣いもしてくれる。
おかげで、なんとか取材を終えたものの、
紛争地に迷い込んでしまい、身柄を拘束されてしまいます。
39歳の響子は、夫と息子と姑の4人暮らし。
姑には、
「企業戦士の息子が二人いると思ってるの」
と暖かいのか嫌味なのか分からない励ましを受け、
会社ではギャルOL達の尻拭いをし、徹夜作業も引き受ける。
鏡を見ながら
「負けちゃダメ。弱音をはいちゃダメ。」
と自分に喝を入れるあたり、とてもリアル。
こんな経験は、
男女問わず誰にでもあるのではないかと思います。
それでも、やっぱり。
「働くお母さん」は大変だとひしひし感じました。
妻やって、母やって、嫁やって、企業戦士やって、
なおかつ、女でもいたいわけですから。
『女たちのジハード』が20代女性の戦いを描いたものなら、
こちらは30代既婚女性のギリギリ感を見せてくれています。
ただ。
キプロス島の紛争が、響子と檜山の関係を変えていくわけですが、
その政治的・歴史的背景は、
はっきり言って、全然知らない話。
なのでなかなか話しにのれない。
女性誌のハイクラス感を演出したい響子と、
元は報道カメラマンで政治背景が気になる檜山との温度差は
とても分かる気がするのですが、
なかなかストンと腑に落ちるところまでいけないのです。
まぁおかげで、
言葉が通じない異国で、異邦人二人が感じた疎外感は際立って感じます。
そして、この疎外感は、
本来の居場所でも二人が感じているものなのですが。
でも、檜山と過ごした数日が、
ほんの少し響子を変えたラストはとてもせつなかったです。
大きくは変わらない。ほんの少し。
それが同世代の女性として、とてもよく理解できました。
2008年05月25日(日) 23:48
![]() | 女たちのジハード (集英社文庫) 篠田 節子 ちびちび的プチ評: ![]() ![]() ![]()
共感するキャラが一人はいそうな「女」の物語です。 集英社 2000-01 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
保険会社に勤める5人の女性の物語です。
「お局」扱いされ、自分の城をもつことに奮闘する康子。
玉の輿を狙って女を磨くことにやっきになっているリサ。
有能であるがゆえに肩たたきにあったみどり。
男に振り回されながらも男にすがって生きていく紀子。
英語を武器にキャリアを目指す沙織。
男社会の中で、出世の道なんてまったくなく、
無能な男たちの尻拭いをすることに我慢できなくなる女たち。
それぞれに自立を目指し、
今いる場所からのランクアップを目標に奮闘しています。
キャラクターが
たぶんにステレオタイプな気もしますが、
その分、誰か一人は共感する人物がいそうです。
彼女たちの「戦い」は、
男の人には理解しがたいかもしれません。
そして。
今の20代女性にも、分からないところはあるかも?
逆に、
「こんな時代もあったんだなぁ〜」
と不思議に感じるくらい社会が変わってくれればいいのに、
と思っちゃいますが。
かつて「末端女子社員」と呼ばれた世代のちびちびとしては、
とても面白く読みました。
でも一番の感想は、
「紀子みたいになりたくない!」
だったのですが。
当時の直木賞選考委員の男性方に
一番受けたのは紀子だったのだとか。
う〜ん。
この「違い」が恐ろしい。
これが彼女たちを苦しめてきたんだよな・・・。
それを分かっていない人たちが選考委員てところが、また恐ろしい。
2008年02月05日(火) 23:44
![]() | 絹の変容 (集英社文庫) 篠田 節子 ちびちび的プチ評: ![]()
想像力を刺激されて、コワキモです。 集英社 1993-08 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
八王子にある包帯会社の二代目社長・長谷康貴は、
七色に輝く絹の織物を見つけ、これを再生しようとします。
山梨の山奥に通い、野蚕を発見。
でも、反物にするためにはたくさんの蚕が必要です。
ということで、
天才的な頭脳を持つ有田芳乃に協力を依頼します。
芳乃はバイオテクノロジーを使って、
偏食の蚕を矯正し、巨大化・大量繁殖に成功。
ようやく一反の織物が出来上がったとき、
八王子の街に奇妙な現象が起こります。
木陰、草むら、湿気のあるところを行進する、
巨大な白い蚕の群れ。
しかもこの蚕、肉食なんです・・・。
うぎゃぁ!気持ち悪い!!
そして、蚕の偏食を治すためと、
街のパニックを沈めるために芳乃がとった技術がまた。
おえぇぇ!!!
お話としては、も少し膨らませてもよかったのにな〜
、
と思うほどなのですが。
読んでいるうちに、
イヤでも状況を想像してしまう、この筆力。
脱帽です。
でも、ご飯食べながらは読めません。ご注意を!
2008年01月15日(火) 22:26
![]() | アクアリウム (新潮文庫) 篠田 節子 ちびちび的プチ評: ![]()
いろんな要素がつまってますが、共感できるかは、? 新潮社 1996-07 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
真面目で勤勉な地方公務員。
熱帯魚だけがオトモダチの長谷川正人は、
奥多摩の地底湖で遭難したダイビング仲間を探しに行きます。
仲間の恋人に頼まれて。
実は彼女は、正人が秘かに恋していた女。
断りきれずに向かった迷路のような湖で、
不思議な生物と遭遇します。
白い潜水艦のような生物=イクティに惹かれ、
奥多摩通いを続けるようになった正人。
そこで、道路建設と環境破壊に係わる運動に関わることになる。
最後に生き残った個体であるイクティと正人の、
静かで情熱的な交流シーンは、
自分の中で勝手に映像化されちゃうくらい見事な筆致です。
変化の少ない地底湖での命の受け継がれ方などは、
地球全体に広げてみても同じこと。
ちょっとホラーチックですが、
自然環境をいろんな側面からみることが出来るのでは、と思います。
で、水の中の話は、
穏やかな交歓にファンタジーを感じるのですが、
地上での話は超・現実的。
泥臭く、汗臭く、陰謀・策略渦巻く世界。
「小市民」の典型のようだった正人の狂気が、
どんどんと膨れ上がっていくところは別人?のようです。
「結局、それで何が変わるんだろう・・・」
そう思わずにいられないお話でした。
2007年12月06日(木) 23:22
![]() | 聖域 篠田 節子 ちびちび的プチ評: ![]() ![]()
「死」の匂いプンプンで怖いけど惹き込まれます。 講談社 1997-08 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
山稜出版に勤める実藤は、
退職した社員の荷物から未完の小説原稿を見つけます。
「水名川泉」という作家の書いた時代小説に
一気に惹き込まれ、どうしても結末が欲しいと思いつめる。
まずは彼女の居所を探そうとするのですが、
これまでの担当編集者、
付き合いのあった大御所の作家などが、
「泉には関わるな」
と、実藤をとめる。
諦めきれず、行方を追ううち、
ある新興の宗教団体へ行きつきます。
ついに探し当てた泉と実藤の対決が、
一番の見所(読みどころ?)です。
まず、作家VS.編集者の闘い。
身を削るようにして言葉を紡いでいく作家と、
書き上げてからなら力尽きてもいいと考える編集者。
「人間としてどうよ?」と思われるかもしれませんが、
実際、創造の現場というのは壮絶なものです。
小説という虚構の世界の裏側をのぞくようで、
ドキドキさせられました。
そして、あの世とこの世をつなぐ存在となっていた泉と、
世迷言は信じないとはねつける実藤との対決。
この辺りは宗教哲学に触れる内容なので、
仏教に興味のある方、民俗学に造詣のある方には、
ぜひお奨めします。
人間は、生きている間には「死」を経験できず、
死んだときには、「我」がなくなってしまう。
その意味では不完全な存在だ。
と、哲学者のハイデガーが言っていましたが、
まさしくこの言葉をなぞったような小説です。
ただ、とても重い。
電車の中で読んでいたら、気分が暗くなっちゃいました。
そして、乗り過ごしてしまう・・・。
それくらい、夢中で読める本です。








