人生万事塞翁が馬。 でも、なんだかこんがらがってしまうことが多い日々。
           
荻原浩『メリーゴーランド』
2008年05月06日(火) 23:26
メリーゴーランド (新潮文庫)メリーゴーランド (新潮文庫)
荻原 浩

 ちびちび的プチ評:
  浮世離れした公務員の姿にそら恐ろしくなります。

新潮社 2006-11
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Uターン帰郷して、市役所に勤める啓一は、
役所のお荷物と呼ばれるテーマパークの
再生事業を担当することになります。
まず、事業部の名前でもめる人たち。
面子と見栄とヨイショばかりで話が進みません。
そして、会議のための会議が続いて、もうゲンナリ。

「好きなようにやってやるさ」
と、昔の劇団の先輩を呼び込み、
メーカー勤務時代のつてを頼って仕事をさばいていく。
知り合いの棟梁に依頼して若手を回してもらい、
どうにかオープンにこぎつけます。
が。
前年度より業績を上げてはいけないのが、お役所の仕事。
なぜなら、それまでの仕事ぶりを否定することになってしまうから、
なんだとか。
上司は知らんぷり。なので、当然。責任は啓一に降りかかる・・・。

民間の企業人からすると、
「なんじゃ、そりゃ!?」と思うこと請け合いです。
特に、経費の考え方・算出法なんかは、オイオイと思います。
まぁ、公務員の方が読むと、
「ここまでひどくない」と感じるのかもしれませんが、
今のお役所関連のニュースを見ているとね・・・。
現実は遠からず、と思えてしまいますが。

荻原さんの小説には必須の強烈キャラクターたちが
今回も大暴れしています。
傍若無人な団長しかり、典型的なヤングマンしかり。
ヤンキーの大工集団には、大笑いさせられました。
ユーモア小説ではありますが、
勤め人ならではのせつない思いもいっぱいつまっています。
ラストの「メリーゴーランド」のシーンは、
とっても美しいエンディングですよ。
荻原浩『明日の記憶』
2008年05月05日(月) 21:08
明日の記憶 (光文社文庫)明日の記憶 (光文社文庫)
荻原 浩

 ちびちび的プチ評
  誰かと共に生きることの幸せをかみ締めました。

光文社 2007-11-08
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広告代理店の営業部長を務める佐伯は、
ワーカーホリックで大酒のみだったのですが、
体調がすぐれず病院にかかることになります。
そこで告げられた病名は、若年性アルツハイマー。
まだ50歳だというのに。
まもなく一人娘が結婚するというのに。
そしてすぐに「おじいちゃん」になるところだというのに。

結婚式までは現役でいたいと励む佐伯ですが、
アポを忘れ、会議を忘れ、取引先にたどり着けずに迷子になる。
自分ではまだしっかりしているつもりなのに、
周囲の反応に過敏になり、顔色をうかがってしまう。
誰にでもありうる「うっかりミス」や「ど忘れ」が、
アルツハイマー患者には
こんなにもビクビクしなければならない「事件」になってしまうのだな〜と、
感じます。

患者本人である佐伯の一人称で物語が進むので、
この辺りの焦りや怒りが読んでいて辛いほどです。
愛する家族がいるからこそ頑張ろうとも思いますが、
病気の進行を考えると恐ろしくてたまらなくなる。
記憶を失うことは、自分を失うこと。
その恐怖と闘いながら佐伯は、
何かに怒りをぶつけるわけでもない。
日々、必死に「生」にすがりつく姿が淡々と綴られます。

ラストシーンを読むと。
私は妻の枝実子さんのように、
全てを大きく温かく受け止められるだろうか。
と、考えてしまいました・・・。
重いテーマですが、枝実子さんのおかげで、
希望をちょこっと感じられるラストです。



荻原浩『母恋旅烏』
2008年03月04日(火) 20:02
母恋旅烏 (双葉文庫)母恋旅烏 (双葉文庫)
荻原 浩

 ちびちび的プチ評
  笑いあり、涙ありの荻原ワールドが堪能できます。

双葉社 2004-12
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大衆演劇出身の花菱清太郎は、
「いかにも」なダメ親父です。
自分の劇団は潰れ、事業は失敗。
借金ばかりがふくらみ、キャンピングカーで生活することに。
でも、暗さはないんですね。
のん気すぎるほどにお気楽で、
将来設計は大甘なもの。
それもこれも、「床の間に飾ってある」と言われるくらい
愛してやまない妻の美穂子にかっこいいところをみせたいから。

父・母・長男・長女・次男・長女の娘の6人家族だった花菱家ですが、
父からの「独立」を目指して長男・長女は家を出てしまいます。
口ばっかりで計画性のない父親の身勝手に付き合ってらんない!
というわけですが。
それぞれ体当たりで「居場所」を見つけていくくだりは、
「青春だな〜」
と思うくらいに、おかしくてせつない。

そして、かつての劇団に身を寄せた父に連れられ、
一緒に舞台に立つようになった次男の寛ニくんの成長。
心優しく、無邪気なだけだった寛ニくんが、
舞台の魅力にとりつかれ、
いろいろと創意工夫し、研究熱心になる。
つまり、役者となり、大人になっていくわけです。

物語は、
父、長男、長女、次男の視点から交互に綴られます。
アクの強い人たちに混ざって、
YESとNOをはっきり言わない母。
彼女が「独立」するためにした選択は、
お〜、ちょっと驚きました。

家族とはなにか。
夫婦とは、親子とは、なにか。
相変わらずユーモアたっぷりの小説ですが、
人と人とを結びつける絆についても考えさせられました。

荻原浩『誘拐ラプソディー』
2008年02月13日(水) 23:54
誘拐ラプソディー (双葉文庫)誘拐ラプソディー (双葉文庫)
荻原 浩

 ちびちび的プチ評
  誘拐犯と子どもの珍道中にホノボノします。
双葉社 2004-10
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金なし、家なし、女なしの伊達秀吉にあるのは、
前科と借金だけ。
とうとう勤め先の親方を殴って逃走してしまいます。
金も底をつき、死ぬしかないと思いつめた秀吉。
しかし自殺するための現場で知り合った伝助が、
お金持ちのお坊ちゃんらしいと気付いて方針変更。
彼を誘拐することにしたのです。

行き当たりばったりな犯行ですが、
秀吉には指南役がいました。
刑務所で知り合ったシゲさんの言葉です。
ところが、伝助は、実は意外な「お家」の子どもだったことから、
事件は急展開。
お家騒動に香港マフィア、
点数稼ぎにやっきな刑事まで繰り出して、
秀吉は頭を抱えてしまうのです。

「誘拐した子どもを帰すのは、誘拐するより難しい」

そんな悟りのような法則まで浮かべながら、
伝助との珍道中を続ける秀吉。
自殺しようとしながら果たせず、
秀吉のドタバタが20ページも続くのですが、
人間、死ぬ気になれば、どんなことでもできる。
弱いくせに悪党になりきれない秀吉が、
腹をくくってみせるところはかっこよかったです。

でも何より一番。伝助くんが、
とてもおバカで無邪気で、たまらなくかわいい。
荻原浩『ハードボイルド・エッグ』
2008年01月30日(水) 20:47
ハードボイルド・エッグハードボイルド・エッグ
荻原 浩

 ちびちび的プチ評
  男の美学を貫くのも楽じゃないんですな。

双葉社 1999-10
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レイモンド・チャンドラーの小説を読んで、
フィリップ・マーロウに憧れた人ってどのくらいいるんでしょう?
ちびちびは、
あのベタベタの翻訳調に辟易し、
あのベッタベタの男の美学についていけませんでした。

でも、この本の主人公・俊平くんは、
いじめられっ子だった時代にマーロウに出会い、
マーロウに憧れ、マーロウのように生きることを決める。
一応は「私立探偵」を名乗ってはいますが、
仕事の8割は脱走したペット探しです。
公園の芝生の上を四つんばいで歩き、木に登り、
よそのお家の庭を探る。
なのに、スーツは頑固にブルックス・ブラザーズ。ププッ

ある日、迷い犬のポスターを貼るのと一緒に、
秘書募集の広告を出したところ、
やってきたのは「44年生まれ」で「ダイナマイト・ボディ」の
片桐綾。
この何の役にもたたなそうな綾ちゃんが、
実はすんごい特技を持っていて・・・となりそうなもんですが、
そんなことはこれぽっちも起きません。
でもマーロウを気取っているがため、
「普通」の会話ができない俊平くんと綾ちゃんのコンビは、
かなり笑えて、暖かいものでした。

ドタバタに巻き込まれて余裕を失いながらも
一所懸命にハードボイルドを気取る俊平くん。
物語の最初と最後の落差が、いい味でした。

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