人生万事塞翁が馬。 でも、なんだかこんがらがってしまうことが多い日々。
           
米原万理『米原万理の「愛の法則」』
2007年11月14日(水) 22:49
米原万里の「愛の法則」 (集英社新書 406F)米原万里の「愛の法則」 (集英社新書 406F)
米原 万里

 ちびちび的プチ評
    彼女のエッセンスがつまった最後の講演集です。

集英社 2007-08
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ロシア語通訳をされていた米原万理さんが、
学校などで講演されたときの講演集です。
ネタとしては、
これまでのエッセイなどで紹介されているものが
多くあります。
「お!あれだ!」
なんて思うのですが、
これが語り口調になると、
また違ったおもしろさがあるのです。

第1章「愛の法則」についての講演。
旧ソ連の理論生物学者が発表した
「男はサンプルだ」という仮説をもとに、
男はなぜ存在するのかなどなどを考察されます。
これはちょっとマユツバものなのですが、
博学な彼女が放つユーモアは強烈!
ちゃちなフェミニズム論では、決してないですよ。

このほか、
「国際化とグローバリゼーション」の
本来的意味についてのお話、
(両者は同義語ではなく、対義語である)
通訳の限界と可能性についてのお話などが収録されています。

もし今、外国語を学んでいるという方には、
最終章の「通訳と翻訳の違い」を
ご一読されることをお薦めます。
プロの通訳者としてのプライドを感じられると共に、
外国語習得の方法についても参考になる話です。

米原さんの本を読んでいると、
彼女が言葉に対して厳密に、慎重に取り組んでいたことが
よく分かります。
その目的は、よりよいコミュニケーションを築くため。
学ぶところの多いお話ですよ。
米原万理『必笑小咄のテクニック』
2007年08月17日(金) 19:03
新宿の本屋で
「米原万理フェア」をやっていました。
米原さんは、
ロシア語通訳・エッセイストとしても活躍された方。
頭が切れる方なのでしょう。
ユーモアが秀逸で、なおかつ話が深いのです。

思わず手に取った『必笑小咄のテクニック』を
一気読みしました。やっぱりおもしろかった!

必笑小咄のテクニック
 ちびちび的プチ評
  ニヤリからアハハまで、小咄満載です。


小咄とは、短くて笑わせてくれる話のこと。
笑い話、ジョーク、アネクドート、ショートショートなどなど、
古今東西いろんなお話がありますが、
その定型を考えながら、
自分でも小咄を作ってしまおうという本です。

悲劇と喜劇の一発逆転、
動物と子ども、
木を見せて森を見せる、
「三」の使われ方、
誇張と矮小化など、さまざまな型があることが分かります。
ほとんどの小咄は、
この型のどれかを使うか、
ミックスして使うかで、ちゃ〜んと出来上がる。
各章ごとに練習問題がある辺り、
米原さんの本だなぁという感じです。

スターリン政権下でのジョークなどは、
かなりブラックな笑いです。
辛くて惨めな現実を嘆くのは簡単なこと。
それをいかに突き放し、笑い飛ばすか。
これも「生きる知恵」なのでしょうね。
米原万理『ガセネッタ&シモネッタ』
2007年07月06日(金) 12:17
ロシア語通訳だった故・米原万理さんのエッセイです。
タイトルから、もっと下世話な話かと思ったのですが、
相変わらずの愉快・痛快・ちょっと骨太なお話でした。

ガセネッタ&シモネッタガセネッタ&シモネッタ
米原 万里

 ちびちび的プチ評
  気軽に手軽に読めますが、内容は濃いです。

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同時通訳の現場で起きるさまざまなハプニングは、
未知の世界であるだけに、とてもおもしろいです。
ある国際会議でのこと。

「社会民主主義と民主社会主義がどう違うのか。
 カレーライスとライスカレーがどう違うのか(中略)
 あるいはクソと味噌がどう違うのかという感じで・・・」

カレーも味噌もソ連(今のロシア)にはない。
見たことも触ったこともないものを伝えるために、
わずか数秒で置き換えられる概念を探さなくてはならない。
「通訳者に求められるのは、機転」
と聞いたことがありますが、
なるほど、言葉と文化の闘いの中に生きる人たちは、
機転がきいて、ユーモアのセンスがあります。

他言語の同業者によるエピソードや、
米原さんが子どもの頃暮らしたチェコでの学校生活、
言葉をめぐる対談など、内容はとっても濃いです。
なかでも、時事ネタをぶった切る文章は、
皮肉たっぷりでニヤリとさせられました。

ちょっと気になったのは、「鎖国癖」のお話です。
1975年に先進国首脳会議が発足して以来、
日本とそれ以外の国の通訳方法が違うのだとか。
例えば、フランスの首脳の発言は、

フランス語→ドイツ語、英語、イタリア語、ロシア語

と、直接訳されます。
が、なぜか日本だけは、英語経由で日本語訳される。
同じように、日本の首脳の発言は、
いったん英語に訳されてから、各国語に訳される。

米原さんも「鎖国時代と変わらない」と両断していますが、
二ヶ国語間の通訳でも、
抜け落ちてしまう情報・概念・思惑もろもろあるでしょうに、
なぜにこんなやり方をしているのか?
とっても不思議。
2000年に書かれたエッセイですから、
7年経った今はどうなのでしょうね・・・。

ともあれ。
本書では、米原さんの飽くなき好奇心とプロ根性と、
ヘンも愉快も併せて飲み込んでしまうという、
器量の大きさを感じました。
米原万里『魔女の1ダース』
2007年05月26日(土) 23:57
電車の中で読んでいて、
ブフッと大笑いしてしまいました。

ロシア語通訳、エッセイスト、作家として活躍されていた
米原万里さんのエッセイ集。
魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章
米原 万里

ちびちび的プチ評
お気楽な日曜日に、お家でのんびり読むのにぴったりです。
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ロシア語の専門家として、
異文化と長年接してこられた米原さん。
ところ変われば、常識も変わる。
異文化コミュニケーションには
意外な発見があることを教えてくれます。
私たちが無意識かつ当然だと思っていること=常識や正義が
異文化に触れたとたんに転倒してしまう。
その転びっぷりが、
米原さんの筆によって、とても鮮やかに描かれるのです。

例えば。
キリスト教における人間の原罪となった
アダムとイブの物語があります。
では、この二人の国籍は?

この問題について、
まじめな文化人類学の国際会議で激論が交わされたとは・・・。
そして、その爆笑の結末。
最近読んだ『世界の○○ジョーク集』を思い出しました。
(○○は、日本人、反米、紛争地といろいろあります)

私が電車の中で笑いをこらえるのに苦労した部分は、
「人類共通の価値」の章です。
ここには、異言語間でまま起こる音韻的一致や類似が、
「笑い」を生むことがあるというお話が書かれているのですが、
その一致や類似が、なぜかシモネタに多いとのこと。
生きている者にとって、日常もっとも接するのが、
シモだからなのでしょうか。
インプットされる食べ物に身分や男女や民族の違いはあっても、
アウトプットされるものは、変わらない。
もっとも身体的、言語的な表現が豊かで、
人間の普遍性をあらわすものこそ、シモネタなのかしらん。

一例を挙げると、
日ソ間の冷戦関係が
少し解け始めた頃に開かれたシンポジウムにて。
「社会主義労働英雄、陸軍大将」
と物々しい肩書きで紹介された威厳ある将軍の名前が、

「シリミエタ同志」


通訳ブースは笑いが止まらなくなって、
通訳不能に陥ってしまったのだとか。
「笑い」とはズレから生まれると思うのですが、
場所がまじめなだけに、
よけいにおかしみが増してしまったのでしょうね。
通訳ってタイヘンな仕事なんだな〜。

異言語や異文化といった「違い」に触れることは、
意外な発見があって、
それが楽しみの一つでもあると思うのですが、
なかなか簡単には受け入れられないことも多いと思います。
逆に、「異端」だと排斥されることもありますから。
でも異文化と接することで、
これまで意識していなかった自分の核をなす部分が
あらわになってくることがあります。

ちびちびの場合、
国籍は韓国ですが、生まれも育ちも日本です。
日本の公立学校に通いましたから、
日本語は堪能ですが、韓国語はまったく話せませんでした。
結婚前に韓国に留学して、少し学ぶ機会を得たのですが、
その時、一番に感じていたことは、

「日本語って、美しい言葉だな〜」

でした。
ちびちびにとってのネイティブ言語である「日本語」を
大切に、より美しく使いこなしたい!
そう思うことができたのは、
異言語である韓国語に触れたおかげです。

そんな、
異文化コミュニケーションの奥深さを教えてくれる一冊です。

あ。
なぜ、「1ダース」なのに、「13章」なのか。
これは本のプロローグに答えが書いてありますよ。
これもまた、異文化です。


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