人生万事塞翁が馬。 でも、なんだかこんがらがってしまうことが多い日々。
           
山本一力『峠越え』
2008年05月01日(木) 23:56
峠越え (PHP文庫 や 40-1) (PHP文庫 や 40-1)峠越え (PHP文庫 や 40-1) (PHP文庫 や 40-1)
山本 一力

 ちびちび的プチ評
  「情けは人のためならず」を実感できます。

PHP研究所 2008-04-01
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江戸・深川の女衒である新三郎は、
仕事の不始末で莫大な額の借金を背負ってしまいます。
返済を思案しながら旅に出、
男に絡まれて困っていたおりゅうを助けます。
これが出会いの始まり。
実は壺振り女だったおりゅうと共に、
堅気になって人生をやり直そう、となるのです。

まずは江島神社の裸弁天の江戸での出開帳を企画。
成功裏に終われば借金も返せます。
が。
初日から続く大雨で客足はさっぱり。
女衒の親分に「インケツ野郎は簀巻きにする」と言われて青ざめる。
それでも、おりゅうは新三郎を信じます。

「ふたりで手を取り合って、しっかり峠越えをしましょう」

なにを根拠にそんなに信じられるんだろう・・・
と思っちゃいますが。
ここまでの新三郎。イケメンではあるようですが、
どうにも腹の決まらない男にみえるのです。
どこか、ちょっと、逃げ腰で。
それをおりゅうが機転と度胸で支えている。

なんとか首尾よく出開帳を終えた二人ですが、
今度はてきやの親分衆・四天王と女衒の親分を案内して
久能山詣での旅に出ることになってしまいます。
いや、ツアコンって大変なしごとなんですね。
ワガママな年寄りに付き合い、面子を立て、
なのに首尾を賭けの対象にされちゃうのです。

あんまりいい趣味じゃないよな、と思うのですが。
さすが、四天王と言われるだけの親分衆。
懐の具合も違えば、腹のすわり方も違う。
悪態をついていても、新三郎がコケにされたとなれば、
本気の勝負を挑んでかばいます。

そんな大人たちに囲まれ、
新三郎も少しずつ変わっていきます。
おりゅうが側にいてくれる幸せもかみしめながら。

一力さんお得意の、
旅モノ、夫婦愛、若者の成長を見守る大人たち、
といった要素満載の時代小説です。
ラストがあと一押し!欲しかった気もしますが、
読後感はとてもさわやかです。
久しぶりに、堪能しました。


山本一力『辰巳八景』
2007年09月07日(金) 11:32
辰巳八景辰巳八景
山本 一力

 ちびちび的プチ評
  深川に暮らす人々の泣き笑い。味わい深いです。

新潮社 2005-04-21
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深川・辰巳というと、
今の東京都江東区辺りでしょうか。
最近では通勤に便利と高層マンションが立ち並び、
大型スーパーも出店して、
情緒のかけらもない・・・て気がしますが、
数百年前、この場所に暮らしていた人の声はどうなんでしょう。

大川とそれに架かる数々の橋。
お天気に左右される日々の仕事。
何より怖いのは、火事。
そんな江戸の庶民の暮らしを丹念に綴った短編集です。

有名人が主人公とはならない一力作品には珍しく、
「赤穂浪士の討ち入り」という大事件に関わるお話も。
お互いに想いを寄せながら、
決して実らない恋を描いた「永代寺晩鐘」。
数十年の時を隔てても、
やはり愛しく思うという二人のお話「やぐら下の夕照」。
ハッピーエンドじゃないお話の方が、
より切なく印象に残るというのは、
年を取ったせいなのかしらん。

これだけ時代小説を読んでも、相変わらず、
銭貨と銀貨という2種類の通貨に慣れません。
生活に直結する物事だからこそ、
自然に身についてたのかもしれませんが、
江戸の人たちって、すごいな〜。

山本一力『梅咲きぬ』
2007年08月28日(火) 13:31
梅咲きぬ梅咲きぬ
山本 一力

 ちびちび的プチ評:
  江戸の料亭版「おしん」といえそうな、明るく切ないお話です。

潮出版社 2004-12

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一力作品のあちらこちらに登場する、
深川の料亭・江戸屋の女将「秀弥」の物語です。

3歳で踊りの師匠・春雅に弟子入りした玉枝。
長じてから4代目秀弥を名乗ることになります。
まだまだ子どもですが、
三味線の組み立てや稽古場の拭き掃除など、仕事はいっぱい。
でも手抜きをすれば、容赦ない叱責が飛びます。

「その年で楽なことを覚えたらあきまへん。」

うう〜。
ちびちびには無理ですな。
なんで私だけがこんな目に・・・と思っちゃう。
いえ、玉枝ちゃんだって思うには思うのですが、
「自分を哀れんで泣くのは、毒」
という師匠の言葉を思い出して、涙を抑えるのです。
自分を哀れむのは卑しいとのこと。
きびち〜。

師匠の春雅をはじめ、夫の福松、店の下足番の仲蔵、
鳶の政五郎などなど、
玉枝の周りにはかっこいい大人たちがいます。
何がかっこいいって、
江戸っ子の気風のよさだけでなく、
玉枝を良家の子女として猫かわいがりする、なんてことがないのです。
時には、厳しく突き放す。
子どもにはまだ理解できないようなことでも、
きっちり道理をふんで説明する。
玉枝は彼らの教えをしっかりと胸に受け止めて成長します。

物語を通して描かれるのは、
老舗ののれんを守る重さと、
人の上に立つ者としての心構えです。
そのために、玉枝は子どもらしい遊びを楽しむこともなく、
生涯にたった一度の恋も叶うことはない・・・。

個人の生き方を尊重する、
という価値観で育ったちびちびには

ムリ


と思います。
が。
今の政治が取り組もうとしている教育「改革」。
ちびちびにはとても違和感がありますが、
この本を読んでいて思いました。
足りないもの、全部書いてありますよ、ここに。



山本一力『赤絵の桜』
2007年08月14日(火) 21:23
赤絵の桜 損料屋喜八郎始末控え (損料屋喜八郎始末控え)赤絵の桜 損料屋喜八郎始末控え (損料屋喜八郎始末控え)
山本 一力

 ちびちび的プチ評
  もっとヤキモキ焦らして欲しかった!

文藝春秋 2005-06-28
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『損料屋喜八郎始末控え』
の続編です。
損料屋(家財道具のレンタル屋さん)は
喜八郎の仮の姿とはいえ、
商売も調べの仕事も忙しそうな毎日。
前作ほどの骨太感はないけれど、
相変わらずの米屋政八のヘタレぶりが笑えます。

今度は、喜八郎のお仲間にもスポットがあたって、
昔の女が調べ先と関係していたり、
十数年ぶりの娘との再会にうかれたり、
なかなか賑やかな構成です。
なかでもおもしろかったのは、「逃げ水」。
前作で江戸追放となった笠倉屋の意趣返しに、
さすが「大店の主人」と呼ばれただけある!
と、感心しました。
やり返すためにもハンバじゃない金を使うのです。
これぞ、江戸っ子の「見栄」なんですかね。

いつも喜八郎にへこまされる政八と、
よくも悪くも張り合ってきた伊勢屋が首謀者となり、
喜八郎を騙ろうとするラストは、ちょっと見ものです。
あこがれの江戸屋秀弥さんとの
がからんでいるのですが。
ここまでいくまでに
秀弥さんがあんまり登場しないので、
ちびちび的に盛り上がりに欠けたきらいはあります。
せっかくなので、も少し、ヤキモキしたかったな〜。

とはいえ。
棄捐令によっておきた大不況の江戸の街。
雨風に一喜一憂する庶民。
この時代に生きる人たちの力が、
よく伝わってくる作品でした。
作中、新規オープンで評判をよんだ
「ほぐし窯」という風呂屋がでてきます。
12人が一度に入れる風呂が7つあり、
休憩所もあるのだとか。
行ってみた〜い。ほぐされた〜い。


山本一力『だいこん』
2007年08月02日(木) 17:52
女一代で、一膳飯屋「だいこん」を築き上げた
つばきの物語です。

だいこんだいこん
山本 一力
 
 ちびちび的プチ評
  つばきの炊いたご飯を食べてみた〜い!

光文社 2005-01-21
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浅草から深川へ移って、新しくお店を始めようとする
つばきの回想で物語りは進みます。
はじめは、
「なんと負けん気の強い、無鉄砲な人なの
とびっくり!
読み進むにつれ、つばきの強さと孤独に胸を打たれました。

つばきがまだ子どもの頃に、
賭場に借金を負ってしまった父の安治。
母のみのぶも働きに出ることになり、
家事も妹・さくらの面倒も一手に引き受けることになります。
それでも、大工職人としてかっこいい父が大好きで、
そば屋の仲居をする母の姿に憧れをもちます。

そして洪水で街が水浸しになった後の炊き出しで、
つばきの「飯炊き」の才能が開花。
腕を見込んだ火の見番小屋のまかないを、
なんと9歳でまかされるようになるのです。
たぶん、数え年での設定なのでしょうが、
数えの9歳なんて、小学校低学年でしょう。
そんな小さな子が、
飯炊きの火加減の絶妙さはもちろん、
出入り職人のお茶の好みまで覚えてしまうだなんて!
つばきちゃん、「おもてなし」の天才です。

つばきは商才にも恵まれて、
17歳で一膳飯屋を開業します。
いろんな人から支えられ、商いを大きくし、
人定めのコツ、人使いのコツ、商売の仁義を学んでいくのです。
気は強いけれど、
人に詫びるところは素直に頭を下げる彼女を、
思わず応援したくなります。

子どもの頃から一家を支え、
妹の縁談、親の老後の心配など、
つばきには自分のことを考えるヒマもない。
誰かに甘えることもできない。
借金もなくなったし、父の稼ぎも並以上なのだから、
そこまでがんばらんでも・・・
と思うのですが、商いが大きくなればなるほど、
そこで働く人たちへの責任も生じる。
そして、働く場が、
人に生きがいを与えることもあるんだなぁ。

25歳になっての新天地での、つばきの挑戦。
その後も、ぜひ読みたいなと思いました。
江戸時代の庶民の暮らしぶりが
よく分かる「生活史」のようでもあります。
ただ、金銀と銭の換算がややこしい・・・。

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