人生万事塞翁が馬。 でも、なんだかこんがらがってしまうことが多い日々。
           
恩田陸『光の帝国―常野物語』
2008年06月14日(土) 22:01
光の帝国―常野物語光の帝国―常野物語
恩田 陸

ちびちび的プチ評
    その先を、もう少し読みたい!と思わせる短編集です。

集英社 1997-10
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「常野」の人々を巡る短編集です。
常野(トコノ)とは、
普通の人間にはない「力」を持つ人々が暮らす村でした。
たくさんの書物を記憶する力、
遠くの出来事を見る・聞く力などなど。
とんでもなく長生きな校長先生が出てきたりもします。
彼らは総じて、穏やかで知的な人々で、
「群れることなく、常に在野であれ」
との意味をこめて「常野」と呼んだのだとか。

「力」を磨いている最中の少年の話や、
「力」を封印され、過去を忘れている少女の話、
そしてそれを思い出す話など、
どれも穏やかで優しい物語です。

ちびちびのお気に入りは、「達磨山への道」です。
常野の人々にとっての聖地である達磨山に、
普通の人々が登ると、
人生の転機にある人の目の前には重要なシーンが見えるのです。
子どもの頃、父と一緒に登ったことのある主人公は、
学生時代からの友人を誘って山に向かいます。
そこで彼が見たもの、そしてその意味を考えると・・・。

未来を見るというのは、
ワクワクするようなときめきもあるでしょうが、
見たくないものだって目にしてしまうかもしれません。
悲劇を避けるための予告としてならいいのだけれど。
「常野」の人々が持っているという能力。
それゆえに苦しむ人もいて、
もっと先が読みたくなる。そんなお話でした。
恩田陸『ドミノ』
2008年05月30日(金) 22:31
ドミノ (角川文庫)ドミノ (角川文庫)
恩田 陸

 ちびちび的プチ評
  やめられない!止まらない!

角川書店 2004-01
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一億円の契約書の到着を待つ保険会社のOLたち。
契約を取りに千葉まででかけた、その上司。
舞台のオーディションに来て、下剤を盛られた女の子。
ミステリ研究会の次期会長の座を争う大学生たち。
別れを切り出す男と、毒薬をしのばせる女。
待ち合わせ場所にたどり着けず、彷徨うおじいちゃん。
句会のオフ会に向かう警察OB。
次回作の取材にやって来た映画監督とペット。
そして、謎の「試作品」を探す青年。

てんでばらばらのシチュエーションが折り重なって、
東京駅で出逢う時、ドミノが次々と倒れていきます。
そうなったら、もう、止められない!

序盤は、登場人物の状況紹介などがバラバラに続きます。
なにしろ人数が多い上に、舞台もさまざま。
ドミノというよりは、ピンボールマシンを思わせる。
ホントに、てんでバラバラなんですもん。
いったいどうなることかと思いきや。
途中からようやく、少しずつ触れ合い、すれ違いしていき、
全てのベクトルが東京駅に集中していきます。
ここからは、もう一気読みでした。

こんだけたくさんの登場人物がいて、
最後までみんなちゃんと忘れられずにいます。
ちゃんと落ち着くところに落ち着く。(当然ですが)
バイクで東京駅内をかっ飛ばすなんて荒唐無稽ではありますが、
それだけに大いに笑わせてもらいました。
エリコ姉さん、かっこいいです!
乙一、恩田陸ほか『七つの黒い夢』
2008年01月09日(水) 19:29
七つの黒い夢 (新潮文庫)七つの黒い夢 (新潮文庫)
乙一 恩田 陸 北村 薫

 ちびちび的プチ評:
  タイトルで期待するとはずします。
新潮社 2006-02
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『小説新潮』などの雑誌に
掲載された作品を元に編まれたアンソロジーです。
タイトルからもっとホラーな小説かと思っていたのですが、
いやいや、ほんのりダークなファンタジーでした。

7人の作家の作品が掲載されていますが、
ちびちびが読んだことがあるのは3人だけ。
初めての出会いに期待していました。
で、乙一さんの「この子の絵は未完成」がおもしろかった!

これは、
とっても美しい顔をした息子をもつ母の物語。
幼稚園児の息子にはある「能力」があって、
それを母は
「こんなの普通じゃない!常識を身につけて!」
と否定します。
ま、確かに「普通」じゃないんだけど、
とっても夢があるんです。
こんな子いたらいいのにな〜。
私もこんな能力欲しいな〜。
そんなにやっきになって否定しないで欲しいな〜。
と、思ってしまいます。

短編集なので、あっという間に読めます。
新しい出会いを求める方はお試しあれ。

恩田陸『クレオパトラの夢』
2007年09月02日(日) 11:21
クレオパトラの夢クレオパトラの夢
恩田 陸

 ちびちび的プチ評
  「ない」のか「ある」のか。
   見方次第でクルクルかわる世界をうつしています。

双葉社 2003-10
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『MAZE』の主人公、神原恵弥が再び登場します。
今度の舞台は北の街・H市。
双子の妹の和見を連れ戻そうと訪れた早々、
恵弥は、和見の不倫相手だった若槻博士の事故死を知らされます。
弁護士として明るい未来をもっていたはずの和美。
婚約破棄までして恋に落ちたのが、
妻子もちの若槻博士だったのです。
都落ちした博士を追うようにしてH市に移った妹の身を案じる兄。

ここまでならホームドラマのような展開ですが、
実は恵弥には、もう一つ重大な任務がありました。
それは「クレオパトラ」と呼ばれるものを手に入れること。
彼本人にも正体がよく分かっていないのですが、
「クレオパトラ」に引き寄せられるように
物騒な人物がH市に集まってきます。

若槻博士の死は、本当に「事故」だったのか。
失踪した和見と、博士の妻との本当の関係は。
親切な紳士に見えた多田は何者なのか。
そして、「クレオパトラ」とは?

謎が謎をよんで、
恵弥の推理が冴えわたる!はずだったのに、
どうにも空回りしてしまいます。
『MAZE』では、
相棒のはずの満を煙に巻いていましたが、
今回は、恵弥の頭の良さと深読みが裏目に出てしまう。
煙のないところに煙をおこして、
一人「火事だ!」と騒いでいるようなものです。
人の噂、危機管理、疑心暗鬼。
訳が分からず引き回される恵弥と一緒に、
ゾワゾワと恐さを味わいました。




恩田陸『MAZE』
2007年09月01日(土) 10:50
MAZE(めいず)MAZE(めいず)
恩田 陸

 ちびちび的プチ評
  奇妙な世界でのドキドキ体験。重くないホラーです。

双葉社 2001-02
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アジアの西の果てにあるという白い矩形の建物。
そこは「存在しない場所」、「有り得ぬ場所」と
呼ばれています。
外見は「豆腐」のようですが、
妙に人を惹きつけるものがある。
でも、そこには、あるルールがありました。
それは、

「人間消失のルール」

です。

幼馴染の神原恵弥に依頼され、
謎の解明にあたるのが時枝満です。
同行する米軍人のスコット、現地のエライさんの息子というセリム。
「豆腐」の謎と平行して、
彼らのキャンプにも事件が起きる。
そもそも、恵弥は何者なのか。
「豆腐」をどうしようというのか。

謎が謎をよんで、一つの答えが出るたび、別の答えがひっくり返り、
と、ドキドキして飽きさせません。
ミステリーとしては静かに進行していきますが、
心理的にとても追い詰められる。
さすがの筆力です。

主人公の神原恵弥は、
男性ですが、かなりなよなよした女言葉を使います。
そのせいか小説全体が、明るくて軽快です。
ホラーなのに、明るいってのもヘンですが。
そもそも彼自体が、かなりの曲者なので、
あの言葉遣いに騙されちゃうな〜。

同じく神原恵弥が登場する
『クレオパトラの夢』という本があります。
どちらから読んでも大丈夫でしょうが、
『MAZE』で恵弥に慣れてから読んだ方がいいかも。




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