人生万事塞翁が馬。 でも、なんだかこんがらがってしまうことが多い日々。
           
白石昌則『生協の白石さん』
2008年06月11日(水) 14:17
生協の白石さん生協の白石さん
白石 昌則
 ちびちび的プチ評
  こういう「余裕」が欲しいですね。

講談社 2005-11-03
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東京農工大学の大学生協に掲示されたひとことカード。
このカードの回答担当者が白石さんです。
ホントなら、
「○○を入荷してほしい」
など、生協へのお願いごとを書くカードなのですが、
白石さんが担当になってから、
生協とは直接関係のない質問が寄せられるようになったのだとか。
その粋な答えを学生がネットに公開して人気となり、
本にまでなったわけです。

この度、サイトを管理していた学生さんが卒業され、
サイトが閉鎖される旨、新聞に載っていました。
しかたのないことではあるけれど、淋しいな〜。

白石さんのユニークな回答とは・・・。

質問:牛を置いて!
回答:ご要望ありがとうございます。
   本日丁度職場会議が開かれたのですが、結果、
   牛は置けない、と決議されました。
   即決でした。申し訳ございません。

質問:愛は売っていないのですか・・・?
回答:どうやら、愛は非売品のようです。
   もし、どこかで販売していたとしたら、それは何かの罠かと思われます。
   くれぐれもご注意ください。

などなど、「宇宙に行きたい」とか、「○○さんに告白したい」とか、
生協とはぜ〜んぜん関係のない質問も多いのですが、
そういったものに対して、
「ふざけないでください!!!
と言ってしまえば、それで終わり。
今の世の中だと、
「おふざけ禁止のために掲示板を管理します!」
なんて発想がでてきそうなのですが、
白石さんの「余裕」のある対応をみると、
「いいもの」が生まれてきそうなきがします。
それは、思いやりだったり、誠実さだったり、優しさだったり。
それこそ人として一番大切なものではないでしょうかね。

サイトの更新は終了したそうですが、
閲覧は今でも可能です。
興味のある方はこちらへ → がんばれ、生協の白石さん!

ベルンハルト・シュリンク『朗読者』
2008年06月08日(日) 22:45
朗読者 (新潮クレスト・ブックス)朗読者 (新潮クレスト・ブックス)
Bernhard Schlink 松永 美穂

 ちびちび的プチ評
   重くて切ない物語です。
  
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15歳の少年ミヒャエル・バーグは、
親子ほども年の違う女性ハンナに恋をします。
毎日、学校から帰ると、彼女の家で愛し合い、本を朗読する。
けれどある日、ハンナは姿を消してしまいます。
「捨てられた」のは、自分なのか、彼女なのか。
釈然としないまま、でも、他の女性と恋をしても、
ハンナと比べてしまって上手くいかない。

もう二度と会うことはないのだろう、と思っていたミヒャエル。
でも、意外なところで再会を果たします。
そこはナチスの犯罪を裁く裁判所。
法科学生として聴講に来ていたミヒャエルは、
被告人の中にハンナを見つけます。
彼女が犯した許しがたい犯罪に憤ると同時に、
まったく弁解をしようとしない彼女の「秘密」に気がついてしまう。

ナチスの犯罪に加担した者と、その世代。
そして、そのことを指差して糾弾する世代。
ハンナは前の世代であり、ミヒャエルは後の世代なわけですが、
二人の関係の底には愛情がある。
その時、自分はどうすればいいのか?
戦争という極限状況の中でなされた行為の罪と、
それを恥じる思い。
とまどうミヒャエルの述懐を通して、
戦後のドイツが歩んだ世代間ギャップの揺れが見える気がします。

ハンナが送る手紙に無反応を通したミヒャエルと、
最後に彼女が選んだ結末は、う〜、辛いものでした。
でも、彼女はミヒャエルに会うとき「女」であり、
人間としてのプライドを貫いたのだろうな・・・と思うと。
彼女の不器用さが、ますます切なく思えました。

恋愛小説としてはちと重いテーマですが、オススメです。


清水義範『博士の異常な発明』
2008年05月04日(日) 21:40
博士の異常な発明 (集英社文庫)博士の異常な発明 (集英社文庫)
清水 義範

 ちびちび的プチ評
  いや〜まいった!笑った!惚れました!

集英社 2005-08-19
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キューブリック映画のもじりだなとすぐ分かるタイトル。
ジャケ買いならぬ、タイトル買いをしてみて、
う〜ん、思わぬ大当たりでした。

史上最大の発明はなにか?
という新聞記者たちの雑談から始まり、
様々な発明家たちによる大発明を綴った短編集です。

ペットボトルをあっという間に分解してしまう菌の発見や、
コロンブスの卵的発想から誕生した透明人間。
あっと驚く大発明がいっぱい登場します。
せっかくの発明なのに、その行く末は・・・という辺りも、
しっかりスパイスの効いたつくりになっています。
ダジャレ、パロディのオンパレードで、
まぁ、もう、大笑いでした。

ちびちびが一番笑ったのは、「袁孫の発明」。
遠い唐の時代。皇帝に仕える袁孫という発明家が、
墨汁と筆を工夫して、乾かない筆を発明します。
これを応援したのが二人の宮廷書記。
その名も、紋武蘭(モンブラン)と巴苛(パーカ)です。
実用的なものを作ろうとして、
とんでもなく非現実的なものを生み出してしまう。
袁孫という歴史に埋もれてしまった人物に拍手!

ニヤリとさせられたのは、
「鼎談 日本遺跡考古学の世界」。
一万年後の世界で、
日本の遺跡を研究する学者たちの鼎談です。
少しだけ発見された遺跡を元に
学者たちが大真面目に議論を交わすので、
ピントがずれているような、当たっているような・・・。
21世紀前後の日本は、
なるほど、こうだよな〜とうなずいてしまう
ブラックユーモア満載のお話。

清水さんの本は、これが初めてでした。
かる〜く笑いが欲しい方、オススメします。

佐野真一『人を覗にいく』
2008年01月02日(水) 22:43
人を覗にいく (ちくま文庫)人を覗にいく (ちくま文庫)
佐野 真一

 ちびちび的プチ評
  人選がすごい!バラエティ豊かです。

筑摩書房 2002-02
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「覗にいく」と書いて「みにいく」という本です。
まさにその名の通りの内容です。

漫画家・つげ義春から紀伊国屋の社長。
村西とおるAV監督、歴史学者の網野善彦、千昌夫、
当時の北海道知事に東京都知事などなど、
いろんな分野の様々な地位の人が登場します。

ダイソーの社長と会ったとき、
「お手柔らかに頼みます」
と言われるくらい、
皮肉で嫌味な感じもありますが、
それでも佐野さんが書いた「人物評」はおもしろい。

通り一遍の「見たこと」だけでなく、
取材相手の業界をきっちり調べているからこそ、
深みのあるインタビューになるんでしょう。
とんでもない酒の飲み方をする人のことも、
精神的に不安定で繊細な状況にある人のことも、
容赦せず、かつ、個人の判断で切り捨てることもなく、
ありのまま受け止める。
そんな「大きさ」も感じました。

佐野さん自身はあとがきで、

「日本に生息する快人、怪人たちをコレクションした本」

と書いてらっしゃいます。
うん。
豪傑な人物=怪人ほど、
やっぱり読んでいておもしろいです。



佐野真一『この国の品質』
2008年01月01日(火) 22:18
この国の品質この国の品質
佐野眞一

 ちびちび的プチ評
  相変わらず「濃い」佐野節炸裂!です。
ビジネス社 2007-10-31
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近頃、流行の「○○の品格」という本のタイトル。
でも今のニッポンには「品格」なんて上等な言葉はいらない!
というのが、この本のタイトルの由来です。
すでに佐野さんの思い炸裂ですね。

第一部は講演、
第二部にはエッセイ、
そして第三部はルポ2作が収録されています。
なので、重複する部分も多いのですが。
読み応え充分な内容です。

佐野さんのモットーは、
民俗学者・宮本常一の「あるく みる きく」哲学です。
「東電OL殺人事件」のその後や、
中内ダイエーの栄光と挫折など、
事実だけを拾い集めるのではなく、
「人間」をあぶりだすために哲学を実践する。
その手法は徹底されていて、
新聞などでは読めない話を知ることも出来るのですが。

評価が分かれるところは、
佐野さんの「感情的記述」でしょうね。
数々の話を集めた結果としての「仮説」なのか、
「思い込み」から取捨選択されたストーリーなのか。
読んでいて判断がつかないところが、
ちびちび的にはちょっと入り込めない。

ただ。
この本を読めば、
テレビのコメンテーターが述べるようなことは
「薄っぺらな議論」だとすぐ見抜けるようになるかも。
現場を見た人間の強さ。
それを何よりも感じる一冊です。

新年はじめの本はこれにしようと決めていました。
今の日本を知るにはうってつけだと思ったから。
どうか、もう少しでいいから。
心豊かに、穏やかに、
あたたかい気持ちで生きていける社会になりますように。
願いをこめて、2008年のスタートです。
読んでくださった方に、幸多い一年でありますように。

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