2008年06月10日(火) 23:20
![]() | OUT(アウト) 桐野 夏生 ちびちび的プチ評: ![]() ![]()
とっても息苦しい読み物でした。 講談社 1997-07 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
弁当工場で夜勤をしている4人の女性。
元信金OLの雅子は切れ者だけれど、飾り気のない人。
姑を介護しながらぎりぎりの生活をしているヨシエ。
内縁の夫が家出し、サラ金の返済に困っている邦子。
そして、夫の暴力から殺人を犯してしまう弥生。
困った弥生は、事後を雅子に相談し、
雅子はヨシエと共に死体をバラバラにして捨てることを思いつく。
そこに金のニオイをかぎつけて邦子が闖入。
4人は秘密を共有する運命共同体となる。
の、わりに。
お互いを思いやることはあまりなく、
嫌味や当てこすりの台詞も多い。
雅子のしきりに逆切れした邦子の気持ちも分かる気がしますし、
邦子は信用ならないと思う雅子の言動は当然のようにも思える。
普段は仲良しにみえても、
その奥にある女の友情のどす黒い部分が描かれていて、
なんとも息が詰まりました。
4人が4人とも、
「ここではないどこかへ」
の出口を求めていて、
夏の湿気と死体のニオイと追い詰められる焦りとで、
これまた、とっても息苦しい。
雅子は、夫や息子が帰宅すると、
「掃除されて片付いた部屋で、ご飯が出来ている」
と、当然のように思っていることを不思議に感じる。
男の人は会社で大変な思いして帰ってきて、
家の中で癒されればそれでいいものね。
雅子の夫のように、自分だけの城に閉じこもることも可能だし。
でも、ここに登場する女たちは。
ベルトコンベアにのって自分たちが作る弁当と同じ程度にしか、
自分たちの「生」を感じられない。
一線を越えてしまった理由は、
「後で考える」と雅子は言っています。
INからOUTへの一歩は簡単なようで難しく、
超える方も超えられる方も、大きな痛みをともないます。
自分でも分からない衝動によって踏み出してしまった、一歩。
待っているのは、破滅なのか、自由なのか。
読み応えありますが、ちょっとグロい描写もありますんで、ご注意を。
2008年06月04日(水) 23:14
![]() | 効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法 勝間 和代 ちびちび的プチ評:
ハウツーの「目録」です。 ダイヤモンド社 2007-12-14 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
現代社会において、「通貨=情報」であるとして、
効率よく情報を集め、蓄積し、活かしていこうという本。
なのですが。
ちびちびは、読めば読むほど、
勝間さんが伝えようとしていることとは
逆のことを受け取ってしまった気がします。
まず、普段持ち歩いているもの。
ノートパソコン、MP3、万歩計、心拍数の計れる時計、
デジカメ、ICレコーダー・・・。
この人の周りって、電磁波いっぱいですな。
いや、違う!そういうことを読むんじゃないんだ!
そして、本の買い方。
ちゃんと著作権を払って新刊で買わないと、著者に失礼です。
とのことですが、月に何十冊も買う勝間さんは、
不要な本はブックオフに持ち込むのだとか。
ふーん。売る人がいるから買う人もいるんだよね、古本屋って。
いや、違う!そんなことを突っ込んでどうする!
で、グーグルに負けない自分を作る。
すき間時間にはMP3でオーディオブックを聞き、
セミナーや人との集まりには積極的に参加し、
ブログを開き、人脈を作って。
そうして集めた情報の本質を見分けられるのは、人間ならではの技。
グーグルには負けない。
そんなもんと競ってどうすんだ!?
と、読めば読むほど、突っ込みどころばかりが増えてしまいました。
普段、こうしたビジネス書を読まないせいでしょうか。
「私は○○を使っています。それについてはこちらを参照→×××」
という内容で本が成り立つ、というのが、よく分からん。
本を読もうとか、異業種交流会に行ってみようとか、
そういった話はどこにでもあることだと思います。
要は、できるか、できないか。
そして、もっと大事なのは、継続できるかどうか。
だと思うのですが、そこについては何もない。
で、こんなに慌ただしく仕事して、収入をあげて、
どこに行きたいんだろう?目標はなんなんだろう?
と、思ってしまう。
でも、逆なんですかね。
行き着く目標があって、そのために収入を上げたい人が読む本なのかしらん。
「貧乏ヒマあり」のちびちびには、
とぉ〜い話に思えました。
この本を読みたいと思われる方は。
ある程度コンピュータをさわった経験がないと
分かりにくいかもしれません。
マッキンゼーってなに?
フォトリーディング、マインドマップ、フレームワーク、ディープスマート力???
となる方は、
別の本で予習してからの方がいいのかもしれませんよ。
2008年03月18日(火) 19:01
![]() | 「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート (生活人新書) コリン ジョイス Colin Joyce 谷岡 健彦 ちびちび的プチ評: ![]()
日本で外国人が暮らすためのハウツーが笑えます。 日本放送出版協会 2006-12 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
イギリスの元・新聞記者であるジョイスさんの
日本見聞録です。
15年以上も日本で暮らしていて、日本語も堪能というだけあって、
日本人が当たり前だと思っている習性や言葉に関する考察は
とてもおもしろく読みました。
ジョイスさん一番のお気に入りの日本語は、
「おニュー」
だそうです。
英単語に日本語を組み合わせて使うという柔軟性と発想力、
おまけに「おニュー」なものに生じる幸福感までとらえている。
普段なにげなく使っている言葉ですが、
言われてみれば
「なるほどな〜
」
と思います。
「外」からの目線で切り込むと、
違う角度からものが見られますね。
ただ。
こうした「不思議の国・エキゾチックジャパン」を書いた本は、
なぜか白人の欧米人によるものが多いように思います。
(政治に関する本は別にして)
でも、たぶん、同じ国を見て歩いても、
アジア人や黒人の感じたものは別のお話になるのでは?
と思うのです。
日本に外国人が増えたとはいえ、
やっぱり「親切度」は違うように感じます。
そして、また。
日本人の礼儀正しさを指摘する方は、
韓国には行ったことがないのかな?
と疑問に感じます。
ちびちびの感じたところでは、
規律正しさは日本の方がありますが、
礼儀に関しては韓国の方が厳しいし、人情も熱いな、と思うから。
例えば。
本書には、
日本以外では「決して」見られない光景として、
電車の中で一人だけ座った友人が、
連れの荷物を持とうとする日本人の親切に
心温まったと書いておられます。
うーん。
ちびちびは韓国に留学中、
何度もバスの中でおばちゃんに荷物をもってもらいました。
最初は、
「こんなに混み合ったバスの中で、堂々と荷物を奪おうとしている!?」
と驚きましたが、
あぁ、これが韓国の人情なのだな、と納得したものです。
たくさんの荷物を持ってフラフラ揺られている姿が
哀れにみえただけかもしれませんが。
だけど、
日本で見知らぬ方が荷物を持ってくれたことはありません。
おまけに、
松葉杖で電車やバスに乗って通勤していたことがありますが、
その一ヶ月間、
席を譲られたこともありませんでした。
杖をついているとかえって危険なので、無理してはずしたくらい。
こんなことは韓国だと考えられないことでしょう。
確かに「エキゾチック・ジャパン」は独特な世界ですが、
も少し視野が広がらないものか・・・
とも、正直感じたのでした。
2008年02月06日(水) 14:15
![]() | おばちゃまは飛び入りスパイ 柳沢 由実子 ドロシー ギルマン ちびちび的プチ評: ![]() ![]() ![]() ![]()
こんな可愛いおばちゃまになりたい! 集英社 1988-12 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
生きることに意味を見出せなくなってしまった、
エミリー・ポリファックスおばちゃま。
「昔からやってみたかったことを」と精神科医にすすめられ、
CIAへ飛び入りスパイの志願に行くのです。オイオイ
人間違いから採用され、手違いで誘拐され、
アルバニアの牢獄に監禁されてしまいます。
同じく囚われの身のファレルは、
イケメンだけれど、どう見てもならず者。
果たして彼は仲間なのか?
そして、無事にアメリカに帰ることはできるのか?
ミセス・ポリファックスのおばちゃまシリーズの第一弾です。
原書が発行されたのは1966年というので、
かなり前のことです。
そのせいで、小道具なんかもかなりアナログなのですが。
そんな些細なことなんて吹っ飛ぶおもしろさ。
おばちゃまはもちろん、
監視役のアルバニア人たちもとても魅力的です。
超マジな尋問役とおばちゃまとのやり取りは爆笑モン!
絶望的な状況の中、
ユーモアを忘れず、決して諦めない。
勇敢で、知恵があって、ちょっとオトボケなおばちゃま。
うーん。こんな風に年を取りたいもんです。
ギルマンは児童文学を書いていた人なので、
とても優しく、あたたかいお話です。
子どもさんにもオススメ。
で。
山奥の牢獄で、
何もすることのないおばちゃまは、
ずーっとトランプでソリテアというゲームをしています。
あれってそんなにおもしろいもんかね?
と、思っていたのですが。
最近、パソコンの中に
ソリテア・ゲームがインストールされていることに気付きました。
やってみると・・・おもしろいじゃん!
お仕事前のウォーミングアップとして。
手が空いたときの頭の体操として。
オススメです。
2008年01月16日(水) 21:58
![]() | 恋 (ハヤカワ文庫JA) 小池 真理子 ちびちび的プチ評: ![]() ![]()
激動の時代と人間の深い絆を描いていて秀逸。 早川書房 1999-04 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
学生運動真っ盛りの70年代初頭。
運動家の恋人と別れたばかりの布美子は、
イギリス小説の翻訳を手伝うアルバイトを始めます。
仕事先は大学教授である信太郎の家。
信太郎や、元子爵の娘である妻の雛子に対して、
最初は自分とは違う「ブルジョワ階級」の人たち、
と距離を置いていた布美子ですが、
だんだんと彼らの世界に惹かれていきます。
信太郎と布美子が読み込んでいく『ローズサロン』という官能小説と、
雛子を中心とした三人の関係が絶妙に絡み合っていて、
非現実的な生活に生まれた「絆」が少しずつ見えてきます。
そして、時代との対比。
浅間山荘での事件を頂点に、
転換期を迎えた革命運動と日本社会に呼応するように、
三人の関係にも悲劇的な結末が待っている。
布美子がそれまで知らなかった世界に触れ、
のめりこむように夫妻に惹かれていく辺りは、
なんだか微笑ましい。
おずおずとしていて、かたくなで、意地っ張りで。
小さな女の子の所業を見ているようです。
彼らの世界が「閉じた世界」である分、
関係も濃密になるし、それが「すべて」になってしまうのでしょう。
その先に悲劇が待っているわけですが。
ただ。
最後の一文に、人の絆の深さを強く感じました。
こんなにも強く誰かを愛して信じ合うことができたら、
これはこれで幸せなのかもしれないな〜。








